診療報酬事件の舞台となった疑いがある歯科医院。昨年10月に閉院した=大阪市浪速区(医院の名称にモザイクをかけています)
休業状態だった大阪市浪速区の歯科医院で患者を治療したと偽り、診療報酬十数万円をだまし取ったとして、大阪府警が詐欺容疑で、府警の元巡査部長で健康食品販売会社長の男(56)=同府豊中市=と、医院を経営していた歯科医の男(45)=徳島市=ら十数人の逮捕状を取ったことが、捜査関係者への取材でわかった。容疑が固まり次第、27日に逮捕する方針。
捜査関係者によると、元巡査部長と歯科医らは共謀して昨年夏ごろ、患者数人分の歯を治療したとする架空の申請書をつくり、社会保険診療報酬支払基金から十数万円の診療報酬を詐取した疑いがもたれている。元巡査部長と歯科医は任意の調べで、不正受給への関与を否定したという。
府警は今年3月、医院や元巡査部長宅などを家宅捜索し、カルテや診察券、パソコンを押収した。医院は昨年7月中旬から休業状態だったが、架空の申請が繰り返されていたとみて、医院に出入りしていた関係者を調べていた。府警は、元巡査部長が不正受給を主導し、医院が経営難に陥っていたため歯科医が誘いに乗ったとみている。
歯科医は朝日新聞の取材に対し、「元巡査部長に医院を乗っ取られ、脅されて従うしかなかった」と説明。元巡査部長は取材に「医院の運営に協力したが、診療報酬の請求には関わっていない」と話した。(西山良太、大部俊哉)
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〈診療報酬の不正請求〉 厚生労働省によると、架空請求や診療回数の水増し請求などで、2014年度は41の医療機関、医師や薬剤師ら30人の不正請求について、保険医療機関の指定や保険医登録を取り消し、計26億7397万円が返還された。14年度に同省は全国87医療機関に監査に入り、都道府県別では大阪府が最多の12機関だった。指定や登録の取り消し後は国民健康保険団体連合会や社会保険診療報酬支払基金に診療報酬を請求できなくなる。