大阪市ヘイトスピーチ条例で定める手続き
ヘイトスピーチの抑止を目指す全国初の大阪市の条例が7月1日、全面施行される。有識者でつくる審査会と市がヘイトスピーチと認定すれば、発言者名を公表する仕組みで、初日から市民団体がさっそく申し立てる見通し。ただし、表現の自由への配慮から、条例の効果には未知数な面もある。
■橋下前市長が提唱
法務省の調査によると、ヘイトスピーチとみられるデモや街宣は2012年4月から15年9月に全国で1152件あった。大阪府は164件で、東京都の440件に次いで多かった。橋下徹前市長は14年、「ヘイトスピーチはやり過ぎで、問題だ」と条例制定を提唱し、今年1月に成立した。
条例はヘイトスピーチを、特定の人種もしくは民族の個人や集団を社会から排除し、憎悪や差別意識をあおる目的で侮蔑や誹謗(ひぼう)中傷するもの――などと定義。街頭デモなどで被害を受けた市民からの申し立てを受け、法律に詳しい大学教授と弁護士5人でつくる「大阪市ヘイトスピーチ審査会」が、発言内容などを審査。結果を踏まえて大阪市がヘイトスピーチと認定すれば、発言概要や氏名・団体名を市のホームページ(HP)で公表する。インターネット上の動画も対象になり、認定すれば市がプロバイダーに削除を要請する。
市民のほか、市内に通勤・通学している人も申し立てが可能で、7月1日から受け付けを始める。在日コリアンや弁護士らでつくる市民団体が初日に、在日外国人を侮蔑するネット上の街頭スピーチの動画やツイッターの投稿について申し立てる予定。市は早ければ7月中に審査会を立ち上げ、ヘイトスピーチにあたるかどうか数カ月かけて結論を出すという。