阪神大震災で落下した山陽新幹線の高架橋=1995年1月、兵庫県西宮市
大阪府北部を震源とする最大震度6弱の地震で、関西の鉄道は大きくは壊れなかったが、震度6強や7の揺れにいつ襲われるかわからない。国土交通省は、倒壊・崩落すれば甚大な被害となる高架橋の耐震化を促し、全国の対象の97%で完了した。しかし関西の私鉄は遅れ、南海と阪急は3割、近鉄、阪神、京阪も1割が残る。
1995年の阪神大震災(最大震度7)では、山陽新幹線の高架橋が8カ所で崩落し、支柱が708本折れた。激しい横揺れで鉄筋コンクリートの柱がずれて切れる「剪断(せんだん)破壊」が各所で起きた。姫路―新大阪間の再開に81日かかった。
国交省は震災直後から鉄道事業者に対し、震度7でも剪断破壊を防ぐため、柱に鉄板を巻くなどの補強を要求。2013年4月には省令を改め、首都直下地震や南海トラフ地震で震度6強以上が想定され、1日片道1万人以上が利用する路線などの耐震補強を、努力義務として盛り込んだ。
新幹線を運行し、資力があるJR東日本、東海、西日本の3社は独自に基準を定め、独力で在来線を含む高架橋の耐震補強を急ピッチで進めた。11年の東日本大震災後、首都圏の私鉄も対策を急ぎ、国交省が昨年3月にまとめた時点で新幹線はほぼ100%、JR在来線と私鉄も全国の97%で完了した。
国交省は今年4月、新たに「早期復旧対策」を掲げ、高架橋を大きく変形させる「曲げ破壊」を防ぐ補強も進めるよう、首都圏の鉄道事業者に通達。しかし関西の私鉄は対象から外した。同省施設課の担当者は「関西の私鉄はまず剪断破壊を防ぐ補強を急いでほしい」と話す。
阪急と南海の剪断破壊への補強完了は対象の約7割で、阪神、近鉄、京阪は約9割を補強したが、首都圏より遅れているからだ。阪急の担当者は「国の対象以外の高架橋も全て補強する方針で、できるところから進めている」と説明する。
JR西は新幹線と在来線で計4万本ある高架橋柱の剪断破壊対策を終え、13年度から始めた曲げ破壊の対策も、今年3月末までに3割以上で終えたという。
■「一等地」の…