賭け屋のゲーム機で遊ぶ男性=ロンドン、下司佳代子撮影
ノーベル賞から王族の結婚式の衣装まで、何でも賭けの対象にしてしまう英国。目抜き通りには、試合の結果に賭けたりゲーム機で遊べたりする賭け屋が軒を並べる。ギャンブルが浸透する一方、依存症の問題は周囲に気付かれにくく、アルコールやドラッグの問題と比べ社会の認知も不十分だ。(ロンドン=下司佳代子)
使った総額は1億5千万円
「遊んでいると何も考えられなくなる」。トニー・フランクリンさん(46)のギャンブル歴は30年超。使った総額は100万ポンド(約1億5千万円)を超える。
10代前半、英北西部の海沿いの町の商業施設にあった、小銭で遊べるスロットマシンが始まり。昼食代や通学費をつぎ込み、足りなくなれば食器棚から父の小銭を数ポンドずつ盗んだ。親に知られて家族関係は悪化し、16歳で家を出た。
パブに出入りし、より大きな金額を賭けるゲーム機で遊ぶように。給料のいい営業職に就いたが、外回りをすると賭け屋に足が向いてしまう。1万2千ポンド(約180万円)稼いだ月もあったが、それも次の賭けに消えた。
貯金が底をつき、銀行から借金できなくなった30代半ば。人生をやり直そうと恋人と東欧へ移住し、家を買った。だがオンラインのギャンブルはどこでもできる。新しい職場では会議中も机の下にスマートフォンを隠してルーレットを続けた。8万ユーロ(約1千万円)を失い、家を手放した。
8歳の息子は東欧の妻の実家で…