アンカラで16日、出動した軍の装甲車両を取り囲む人々=ロイター
トルコで15日夜(日本時間16日未明)、軍の一部が国営メディアで「全権を掌握した」とする声明を出した。クーデターを試みたとみられ、正規軍の部隊と戦闘状態になった。AFP通信によると、60人が死亡し、政府は336人を拘束した。エルドアン大統領は16日朝、支持者を前に「政府はかじ取りをしている。わずかに抵抗が続いているが間もなく終わる」と述べた。
トルコ国営テレビTRTのアナウンサーは15日夜、「国の全権を掌握した」とする軍の声明を読み上げた。声明は「民主主義が現在の政権によってむしばまれていた」と動機を説明し、「可能な限り早く新しい憲法を準備する」と述べた。ロイター通信は与党・公正発展党(AKP)のイスタンブール支部の話として、同党の建物に反乱軍が入り、立ち退きを命じたと伝えた。
ユルドゥルム首相は同日夜、「軍内のある集団に不法行為があった」「こうした企てを許さない」と地元テレビで語った。16日早朝には「130人以上を逮捕した」と述べた。
首都アンカラでは戦闘機が飛行しているほか、国会付近に戦車が展開した。ロイター通信によると、政府幹部は反乱軍が戦車で国会を砲撃していると認めた。国営通信によると、16日未明、国会で爆発があった。大統領府近くに爆弾が投下されたとの情報もある。
アナトリア通信は、軍用ヘリコプターが情報機関の建物に砲撃していると伝えた。アンカラの軍参謀司令本部で人質が取られているとの情報もある。同本部前で反乱軍のヘリコプターから発砲があり、多数が死亡したとみられる。同通信は正規軍の戦闘機が反乱軍のヘリを撃墜したとも伝えた。
16日未明、CNNトルコなどが入る建物に兵士が押し入り、報道がストップした。誰もいないスタジオの映像だけが流れ銃声や叫び声が聞こえる。
最大都市イスタンブールでは、軍が群衆に発砲したとの情報がある。中心部のタクシム広場では、政権支持の警察と反乱軍の部隊との間で銃撃戦となったとAP通信は伝えた。アタチュルク国際空港などでも銃声が聞こえた。
エルドアン大統領は16日未明、CNNトルコにビデオ通話の形式で出演し、国民に対し「外出して(反乱)軍に対抗を」と呼びかけた。複数の通信社によると、大統領は反乱の動きを「軍の命令系統の外で起きたものだ」とした。大統領を乗せた飛行機は16日未明、イスタンブールの空港に着陸。空港で記者会見し「すべての兵士に呼びかける。この過ちからすぐに戻るべきだ」と述べた。与党AKPや野党各党も政権支持を表明した。離着陸を一時停止していたトルコ航空も運航を再開した。
国家情報機関の報道官は16日未明、米国亡命中のイスラム教の宗教指導者ギュレン師を支持する軍の一派が企てたクーデターだとし、「撃退された」と発言した。政府はギュレン師の団体を「テロ組織」に指定している。(イスタンブール=春日芳晃、カイロ=翁長忠雄)