京都翔英―樟南 一回裏樟南無死二、三塁、上栗は右越えに2点適時三塁打を放つ=内田光撮影
(10日、高校野球 樟南9―1京都翔英)
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樟南(鹿児島)には双子の兄弟がいる。3番の弟上栗大聖(かみくりたいせい)君(3年)は打席に入る前、記録員の兄孝大(こうだい)君(同)に必ず助言を求める。10日の京都翔英戦でも兄の言葉を支えに好打を連発。打線爆発の火付け役になり、9―1で破った。
初回、大聖君はいつものように孝大君の隣に行った。「自分のバッティングをしろよ」。無死二、三塁。兄の言葉から、つなぐ打撃を心がけ、内角低めの直球を振り抜いた。打球は右翼手の頭を越え、逆転の三塁打に。孝大君はベンチでガッツポーズをした。
双子といっても二卵性。顔は似ていない。性格も、よくしゃべる孝大君に対して大聖君はもの静か。それでも、小さな頃から何をするのも一緒で、小学3年でともに野球を始めた。
中学生になると実力差が出始めた。大聖君は才能を開花させたが、孝大君はなかなかレギュラーになれない。樟南でも野球部に入ったが、孝大君は1年秋からけがが重なり、練習についていけなくなった。さぼろうとしたが、その度に練習に誘ったのが大聖君だった。
昨秋の新チームで孝大君はマネジャーに指名された。「今まで助けられた分、大聖とチームを支えよう」
今春の鹿児島県大会。不調の大聖君を見て、ベンチで孝大君が「ここへ座れ」と呼んだ。打撃の助言をすると安打を放った。それから大聖君は打席に立つ前、必ず孝大君の隣に座るようになった。「なんか落ち着く」
この日は2安打。2打席連続で飛球に打ち取られた。七回の4打席目の前、孝大君の言葉はこうだった。「お前は長打を狙う打者じゃない。レフト方向を意識して、単打を狙え」。その通り中堅左翼寄りに放って二塁を陥れ、だめ押しの2点の火付け役となった。試合後、孝大君は「大聖が打ってくれてうれしい」、大聖君も「次も孝大のアドバイスで打ちたい」と話した。(野崎智也)