生野工―東大阪大柏原 選手たちに声をかける生野工マネジャーの久澄紗花さん=住之江、金居達朗撮影
南・北大阪大会は17日、2回戦6試合があった。100回目の夏、5年ぶりに単独出場を果たした学校があれば、選手を鼓舞し続けたマネジャーもいた。敗れたチームも、しっかりと歴史に名を刻んだ。
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勇気くれた「いったれ!」 生野工マネジャー・久澄紗花さん
(17日、高校野球南大阪大会 東大阪大柏原11―1生野工)
一回表、生野工の攻撃。先頭打者が内野安打で出塁。送りバントと四球などで2死一、二塁。先取点の好機が訪れた。「いきなりチャンスで回ってくるなんて」。5番の岡本竜馬君(2年)は緊張した面持ちで打席に立った。
「いったれ岡本!」。球場に響いた声の主は、生野工のマネジャー、久澄紗花(ひさずみすずか)さん(3年)。2球目。岡本君が振り抜いた打球は中前へ。二塁走者が一気にかえった。「うるさい時もあるけど、勇気をもらいました」と岡本君は笑った。
中学時代に高校野球の魅力にとりつかれ、入部を決意。だが、募集していないと当時の監督に断られた。「絶対入ります」。1カ月通い続けて説得し、入部を許された。
今年の新チーム発足当初、おとなしい3年生たちが久澄さんの目には「消極的」と映った。前を向いてほしくて声をからした。次第に練習試合で勝てるようになり、公式戦でも強豪私学に食らいつけるようになった。
最後の試合、3年生は堂々と戦い抜いた。4人全員が安打を放ち、二回には右翼手大森智貴(ともたか)君が頭上を越えかけた打球を2度も好捕。1点リードで試合が進む展開に「すっごいワクワクした」と久澄さん。二回の守備で暑さからか声援がやんだベンチで、「もう声ないんか!」と一喝した。朝井亮監督は「よく引っ張ってくれていた」とたたえる。
5回コールド負け。一人で折った1万羽の鶴を東大阪大柏原に渡すと、涙が止まらなくなった。「私もやり切ったし、みんなもやり切ってくれた。お疲れ様と言いたいです」(坂東慎一郎)