スタンドから戦況を見つめる末神さん(左)と山畑さん=札幌円山
(26日、高校野球南北海道大会 札幌南8―1札幌あすかぜ)
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名刺に記された肩書は「グラウンドマネジャー」。札幌南は末神憧(しゅう)さん(3年)が勝利をマネジメントする。
札幌あすかぜとの一戦は、データ分析部隊「アミティ」のメンバーと観客席から目を光らせた。六回、右翼へ抜けそうな打球が飛ぶと、札幌南の二塁手山本丈斗選手(同)が精いっぱい手を伸ばして捕球、一塁へ送球しアウトにした。「この打者、(打球が)右に飛ぶと昨日から言ってた。データ勝ち」と末神さん。タブレットを操る「データアナリスト」の山畑遼平さん(同)と顔を見合わせ笑みをこぼした。山本選手は「聞いていた分析があのプレーにつながった。彼らのおかげです」とたたえる。七回コールドで勝ち、2回戦に駒を進めた。
2000年夏の甲子園出場時の主将、田畑広樹監督が4月に就任。部員全員でベンチ入り18人を選び、末神さんは「18番」をもらった。「ベンチでチームを引っ張ってほしい」という思いが詰まった背番号だった。
だがその翌日、監督に「グラウンドマネジャーをやってみないか」と打診された。「ああ、きたか」と思った。もともと支える立場で貢献できる自信はあった。覚悟を決め選手たちの前で「今日から選手じゃなくなる。おまえらを絶対勝たせるから」と言い切った。素直にそう思ったが、これまでの練習や両親の期待を思うと涙があふれた。
道内随一の進学校でもある札幌南には野球部専用の資料室「本部屋」がある。そこには野球の専門書のほか、甲子園出場時の練習メニューのノートが並ぶ。
その中に歴代のマネジャーの名前を記したノートもあり、自身が創部116年目で初の男子マネジャーであることを知った。「歴史を変えるためにゼロからイチにしたい。自分たちの代をチームの転換期にしてほしい」。そんな思いで、チーム改革を先導してきた。
今は「選手時代よりも10倍きつい」。選手のケアはもちろん、山畑さんとともに「アミティ」の中心メンバーとして参謀役も担う。最新の理論を取り入れようと海外の教授にメールし、SNSで著名なトレーナーに質問するなど、50人超の専門家とつながってきた。
田畑監督は「一番チームのことを知っている。うちの中枢です」と信頼を寄せる。山畑さんは「チームの中心でありながら、客観的に分析できる末神のすごさが、裏方に回ってよくわかった」。「これからはもっと緊迫した場面がある。勝つ確率を極限まで高めて勝負していきたい」と末神さん。創部116年の歴史を「札南の頭脳」が切り拓(ひら)く。(今泉奏)