両手にメガホンを持ってアルプス席で兄を応援する山口拓くん
(11日、高校野球 日南学園7―1八王子)
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■八王子 山口駿左翼手
高校野球が終わった。引退。試合後、涙をぬぐいながら言った。「大学で野球は続けないと思います」。なぜ? 「弟に色んな事を教えてあげたい。専属コーチになります」
5人きょうだい。姉と妹2人に挟まれ、「一緒に野球ができるから、ずっと弟がほしかった」。2011年6月、待望の弟・拓くん(5)が生まれた。13歳差。1歳になる頃からボールを触らせ、3歳からは軽い棒で野球のまねごとができるようになった。今では家の近くでキャッチボールしたり、バドミントンのシャトル打ちに付き合ってくれたりする。2年夏に右ひざ靱帯(じんたい)を断裂した時は、遊ぶ前に「痛い足どっちだっけ」と気遣ってくれた。
口も達者になってきた。西東京大会は1番打者なのに打率2割で、準決勝まで無安打。家に帰ると、弟は容赦ない。「当てにいってたね。全然バット振れてなかったよ。一緒に素振りしようか」。不振から脱出しようと2人で練習した。その先に待っていた甲子園。西東京大会の優勝メダルをかけてあげた時の弟の笑顔は忘れられない。
この日は3打数無安打で一回には盗塁失敗も。「少し消極的になってしまった。悔しい。弟には『ありがとう。将来、甲子園で勝ってね』って言います」
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弟の拓くんは両手にメガホンを持って、アルプス席から応援した。お兄ちゃんが帰ってきたら何て声をかける? 「……キャッチボールしたい」(大西史恭)