店内には各国の選手やコーチらが集まっていた=リオデジャネイロ、永島学撮影
リオデジャネイロ五輪の選手村近くに、各国の選手やコーチらが夜な夜な集まる人気の居酒屋があるという。地元や客の間では「ビンラディンバー」の呼び名で知られているという。どんな店なのか早速、訪ねてみた。
お店は選手村から北西に徒歩約10分。平屋で座席数は70ほどだ。選手村が近いため警察官があちこちに配置され、治安面は大丈夫そうだ。
平日の午後5時すぎ。店内をざっと見ると、ミャンマーの選手ら2人、南アフリカと書かれたジャージー姿の2人、スロベニアチームの選手ら5人。それぞれビール片手に談笑中だ。各テーブルからは明らかに異なる言語が聞こえ、オリンピックならでは不思議な居酒屋空間になっていた。
チーム関係者は時間とともに続々と増え、ポーランドチームの2人、モロッコチーム3人、セーシェルチーム6人……。かなりの人気ぶりだ。
店主にインタビューをお願いした。現れたのは、長いひげこそ蓄えてはいるが、赤いTシャツ姿の人なつこそうなおっちゃんだった。ジョゼ・フェリペ・デ・アラウージョさん(60)。
「なぜビンラディンバーと呼ばれているの」と聞くと、「あだ名として有名になっちゃった。本名をいっても誰もわからない。いつでも『ビンラーデン、ビンラーデン』て呼ばれるよ。彼らとは全然関係ないんだけどね」
お店の名前は「Come se bem(よく食べる)」。ちょっとしたお金で昼も夜も食べられるという意味だという。一番売れ筋のメニューは「サーロインの炭焼き」(約450円)だ。
人気の秘密を聞くと、ジョゼさんは「周りの店とは、おもてなし、値段、品質が違うことかな。どこでも、おもてなしってのは基本的なこと。全部親切な値段設定だよ。それが成功のタネ。(客は)この店にいると居心地がいいんだ」。身ぶり手ぶりを交えて一気に説明した。「読み書きはできないけど、仕事の仕方はよくわかってる! おもてなしが上手なのさ」と言い切った。
一日に海外からの客は50人以上。五輪で3~4割増えたという。ただ、大規模な野外イベント会場の近くに立地しているため、南北アメリカ大陸の選手が集まるパンアメリカン競技大会(2007年)や、12年開催の国連持続可能な開発会議(リオ+20)などでも海外からの客が集い、口コミで店の評判がグローバルに広がっているのだという。
客にこの店の魅力を聞いてみた。セーシェルチームの陸上コーチ、カルロス・イスカイノさん(48)は「いい人たちが集まっているから。新しく友達を作ったり、笑い話をしたり。楽しいところだよ」。スロベニアのチーム関係者の男性(38)は「おしゃれな雰囲気はないけど、オリンピックの中では一番いいところ。居心地が最高だ」と話していた。(永島学)