女子53キロ級決勝で敗れ、涙を流して会場を立ち去る吉田沙保里=長島一浩撮影
(18日、レスリング女子53キロ級決勝)
吉田が負けた。
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リオオリンピック
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マットに突っ伏したまま、しばらく起き上がれない。再び顔を上げたその表情には、涙とともに無念さがにじんでいた。
マルーリスとの女子53キロ級決勝。吉田はバックを取られるなどして、1―4とリードされた。残りは約1分。相手の懐に何度も入り込もうとするが、攻めきれなかった。
「最後、自分の力が出し切れなくて申し訳ないです」。その言葉通り、世界女王として君臨してきた吉田の爆発的な攻撃力がここ一番で見られなかった。
五輪4連覇に挑んだ吉田は33歳。スピードを生かして攻め立てるスタイルが持ち味だが、20代の頃のように、相手を圧倒する試合は減っていた。
年齢を重ねるごとに、組み手や間合いなどレスリングの技術を磨き、攻守で成熟した面はある。それでも吉田の生命線は、守備的な選手だった亡父、栄勝さんに子供のころからたたき込まれた高速の両足タックルだ。
相手がどんなに研究してきても、それをさらに上回ってタックルを決めてきたからこそ、世界女王として君臨する吉田は「霊長類最強」と呼ばれるまでになった。
リオ五輪で、吉田がまともに決めた両足タックルは、3回戦のサンブ(セネガル)戦の1本のみ。準決勝まで無失点で勝ち上がった試合巧者ぶりはさすがだが、決勝では強豪を次々と倒して勢いのある24歳のマルーリスをねじ伏せられなかった。
試合直後、吉田は観客席にいる家族のもとへ行き、抱き合い、泣きじゃくった。「父がいない五輪は初めてだった。最後の最後に銀メダルに終わると思っていなかった。悔しいです」