今年6月に名古屋城外堀で目撃されたアリゲーターガー=酒井正二郎さん撮影
名古屋城(名古屋市中区)の外堀に潜む全長1メートル超の巨大肉食魚「アリゲーターガー」。在来種の生存に関わると、市や市民団体などが何度も捕獲を試みているが、空振りが続く。なかなか捕まらない背景には、名古屋城ならではの「事情」がある。
特集:どうぶつ新聞
外堀でガーが最初に見つかったのは7年前。コイの群れの中をゆうゆうと泳いでいたという。これまでに2匹が確認され、今年6月には、うち1匹が全長1・3メートルほどに成長しているのが目撃された。
市は、市民団体や専門家などと協力して4年前に捕獲作戦を始めた。定置網や刺し網を仕掛けてきたが、いずれも失敗。市なごや生物多様性センターの野呂達哉専門員は「ガーは神出鬼没。網を張っても違う場所に現れることもあった」と難しさを語る。見かけによらぬ臆病な性格で、他の魚のようには現れる場所を絞りきれないという。
報道を受け、名古屋城を管理する市には「釣りが得意なので、自分が釣ってあげる」といった電話が相次ぐ。しかし、外堀の一部は道路に面していて危険なことから、市は条例で釣りを禁止している。市は外来魚の捕獲が目的でも許可できないとの立場だ。
外来魚駆除で一般的に使われ、効果を上げているのが、水を抜く「池干し」だ。だが、名古屋城では使えないという。
名古屋城は、国の特別史跡に指定され、管理者の市は保護が義務づけられている。外堀の内側には約1・6キロにわたって高さ12~15メートルの石垣がある。「水を抜いたら石垣が崩れる可能性もある」と市名古屋城総合事務所の担当者は話す。
石垣の下には沈下を防ぐために「胴木(どうぎ)」と呼ばれるヒノキや松の太い材木が敷き詰められている。1本の長さは約7メートル、幅約40センチ、厚さ約30センチもあるが、名古屋城の築造が始まった江戸時代初期の1610年から使われているものもあり、乾くと強度を失う恐れがあるという。
釣りも池干しもできず、何より…