しわ取り注射で1300万円の請求が――。高齢女性が美容クリニックでアンチエイジングの施術を受け、高額請求されるトラブルが相次いでいる。国民生活センターは、施術内容や費用の根拠について納得がいくまで説明を受けるよう、注意を呼びかけている。
神奈川県の70代の女性は今年春、しわ取りの広告を見て、クリニックを訪れた。説明を受けるだけのつもりだったが、スタッフに「すぐ終わるから」と言われ、処置室へ誘導された。約30分の施術で、注射4本を打たれた。帰宅後、請求書をよく見ると、費用は約1300万円だった。
60歳以上の女性から寄せられた美容医療のトラブル相談は、2006年度は76件だったが、13~15年度は各年度とも200件以上にのぼった。
一般的に美容医療は健康保険が使えない自由診療のため、各クリニックが施術代を自由に設定でき、高額な費用に関する相談が目立つという。国民生活センターが昨年度の相談に関して調べたところ平均は約127万円だった。
料金基準が不明瞭なケースも。別の70代の女性は「800万円のリフトアップ注射なら20年もつ」と言われ、「払えない」と断ると、最終的に半額の値下げ提示を受けたという。
費用以外では、術後に施術部分がはれたり、しこりができたりといった相談のほか、クリニック側が説明していた効果を感じられないといった声も寄せられているという。
クリニックを訪れるきっかけは新聞の折り込み広告が多かった。広告には「体に全く負担がない」「注射でマイナス10歳」など、違法の恐れがある表現も見受けられたという。
公益社団法人・日本美容医療協会理事の征矢野(そやの)進一医師によると、しわ取り注射は高くても1本十数万円が相場。協会加盟クリニック以外では、診療内容や料金、広告表示について口を挟むのは難しいという。
国民生活センターは16日、「60歳以上の消費者トラブル110番」(03・5793・4110)を設け、午前10時から午後4時まで相談を受け付ける。60歳以上の消費者のトラブルについて、家族らからの相談にも対応する。