経済協力開発機構(OECD)は19日、紛争などの影響で母国を脱出し、OECD諸国に難民申請した人数が、2015年は過去最多の165万人を記録したと発表した。紛争が続くシリア、アフガニスタン、イラクからの難民が全体の約半数に達した。
数値は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などの統計をもとに、OECDが算出した。
OECD諸国への申請人数は10年以降、増え続けており、15年は前年から倍増した。15年の内訳はシリアが全体の約22%にあたる約37万人で最も多く、アフガンが約25万人で約15%、イラクが約18万人で約11%と続く。
全体の75%以上が、欧州連合(EU)加盟のOECD諸国に申請した。最も申請が多かったのはドイツの約44万人で、3分の1がシリア人だった。
ハンガリーが約17万人で2位だが、実際にはハンガリーにはとどまらず、他国へ向かうケースがほとんどだ。一方で、イギリスやフランスの増加比率はドイツに比べて低く、申請者の出身国もエリトリアやスーダンなどアフリカ大陸の国が多い。保護者や養育者を伴わない子どもが欧州諸国に申請した人数は、過去10年で最も多い8万5千人にのぼり、アフガン人が54%を占めた。
OECDは、各地での紛争などによる治安悪化がこうした数字の大幅増につながったと分析する。なかでもシリア内戦の影響が大きく、近隣諸国で難民認定されたシリア人は、内戦が勃発した11年から昨年末までに計480万人。トルコで約270万人、レバノンで約107万人、ヨルダンで約64万人にのぼる。
今年に入り、シリアからの難民申請のペースは15年後半に比べて減少しているが、OECDのジャンクリストフ・デュモン国際移民課長は「危機的な状況は終わっていない」と話している。((中野寛))