左手だけで演奏する月足さおりさん=2013年12月、熊本県あさぎり町
かろうじて動く左手だけで2013年の国際障害者ピアノフェスティバルの金賞に輝き、各地でコンサート活動に奔走しているピアニストの月足さおりさん(39)=熊本県あさぎり町=が今月初め、ある「決断」をブログで表明した。右手が回復する一方で両足の感覚を失った。そんな経験を経た上のこたえだった。
5日、「何カ月も悩んでいた事」と始まった文章にはこうつづられていた。
思い切って来年はコンサートをやめよう!そして、大切な生徒さんたちのために、ゆっくりしっかり時間を使おうと決めました。
月足さんは先天性の骨の病気を抱えている。小学1年でピアノを始めたが、数年前から右腕が動かせなくなり、ゴムの力を借りて指を動かす装具を付けた左手だけで演奏を続けてきた。
昨年10月。目が覚めると、右手の感覚がいつもと違った。左手への治療がもたらした思いがけない効果。リハビリを始めると、1曲、次は2曲と両手で弾けた。「やっと前を向ける。それがうれしかった」
だが今年4月、今度は足の症状が悪化し、歩けなくなった。「回復は難しい」と医師は告げた。骨の異常が進行したのだという。腰から下の感覚が失せて車いすを離せなくなり、ピアノのペダルも踏めなくなった。
足元のスイッチでペダルを動かす装置の開発者など様々な人の助けで再び演奏できるようになったが、思うように姿勢を保てず、弾き方も考え直さないといけなくなった。「苛酷(かこく)さを増した自分の体に、心がついていけなくなった」
そんな自分に、自宅で開くピア…