2004年、有事の際に確保した捕虜の取り扱いが法制化された。自衛隊が確保した敵国の捕虜を収容する訓練の様子。中央が捕虜役=10年版防衛白書から
■戦後の原点
特集:戦後の原点
集団的自衛権の行使や他国軍への後方支援を可能にする安全保障関連法が成立して1年。政府は自衛隊による新任務の訓練を始めるなど運用に動き出しているが、ここに来て、自衛隊員が海外で捕まったときのリスクについて、専門家が強い懸念を表明し始めた。現行法では、隊員は国際法で認められている捕虜の取り扱いを受けられない可能性があるからだ。憲法解釈と現実の自衛隊の運用の新たな矛盾があらわになった。
問題となるのは、自衛隊による後方支援活動だ。対立する軍や武装勢力から自衛隊が攻撃され、隊員が捕まったらどうなるのか。
国際法は、兵士が残虐な行為を受けることを防ぐため、「捕虜」として人道的な扱いを保証するルールを定めている。ジュネーブ条約という取り決めだ。
ところが、政府は、自衛隊員が捕らわれてもこの条約上の「捕虜」には当たらないという立場をとる。これは昨年の国会審議で、民主党(当時)の指摘で明らかになった。辻元清美衆院議員の「捕虜の扱いを受けるのか」との追及に、岸田文雄外相は「日本は紛争当事国となることはなく、ジュネーブ条約上の捕虜になることはない」「こうした拘束は認めない。ただちに解放を求める」と述べた(2015年7月15日衆院特別委)。だが、これでは、捕まった隊員が敵側の法で一方的に処罰されることになりかねない。
国際法の細部に関わるだけに、…