米共和党の副大統領候補マイク・ペンス氏=AFP時事
米大統領選をめぐり、民主、共和両党の副大統領候補による討論会が4日午後9時(日本時間5日午前10時)、バージニア州のロングウッド大で始まった。特徴ある両党大統領候補による前回の討論会では、互いの欠点をあげつらう「空中戦」を展開。それに対し、共に安定感がありながら「地味」とされる両党副大統領候補がどんな論争を繰り広げるのか注目される。
特集:米大統領選挙2016
大統領候補による第1回討論会は9月26日に実施。CNNの世論調査では、論争で「クリントン氏が勝利した」と見る人が58%で、「トランプ氏」の24%を大きく上回った。大統領候補討論会はあと2回予定されるが、今回は民主党ティム・ケーン上院議員(58)と共和党マイク・ペンス・インディアナ州知事(57)の副大統領候補による最初で最後の討論会だ。
ケーン氏は弁護士出身。バージニア州の市長や副知事、知事を経て上院議員に当選。学生時代に中米・ホンジュラスで宣教師を務め、スペイン語も流暢(りゅうちょう)に話し、ヒスパニック系有権者にアピールする。手堅い実務家として民主党内で評価が高い。
一方のペンス氏も弁護士出身。2000年に共和党から下院議員に初当選。6期12年務め、州知事に転じた。保守的な政治姿勢や、キリスト教の熱心な信仰でも知られる。トランプ氏(70)と共和党主流派の亀裂が深まるなか、トランプ氏が主流派を引き留める狙いからペンス氏を起用。トランプ氏の「共和党大使」などと表現するメディアもある。
討論会で注目されるのが、正副大統領候補の間で主張が異なる共和党側だ。環太平洋経済連携協定(TPP)を含む自由貿易に否定的なトランプ氏に対し、ペンス氏は推進派。トランプ氏がイスラム教徒入国禁止を唱えるのに対し、ペンス氏はそれに反対する。
民主党のケーン氏が、こうした矛盾を突いて、初回のクリントン氏(68)の論争での勝利にさらに弾みをつけるのか。それともトランプ氏と共和党保守との「橋渡し役」のペンス氏が、トランプ氏の失言・失態をカバーして、真性保守としての論争を挑んで一矢報いるのか。
「地味」候補の対決で、大統領候補討論会より、むしろ実質的な政策論争が深まるのか、それとも大統領候補同様、空中戦で泥仕合を演じるのかも注目される。(ファームビル〈米バージニア州〉=佐藤武嗣)