「フリー素材モデル」の大川竜弥さんの写真が使われたバナー広告(大川さん提供)
インターネットを通じて無料で手に入れ、自由に使えるイラストや写真が人気だ。「フリー素材」と呼ばれ、個人にとどまらず自治体や企業も広報資料や商品広告に活用している。一方で、こうした状況を複雑な思いで受け止める人たちもいるようだ。
携帯電話、ゲーム、洗濯機、時計、ふとん乾燥機……。様々な商品が並ぶ売り場のお知らせにイラストが添えられている。今月初めのヨドバシカメラ梅田店(大阪市北区)。「無料で使えるのが何よりですね」。担当社員の久田裕之さん(33)は話す。
イラストはネット上のサイト「いらすとや」で入手できる。商用、非商用を問わず、基本的に自由に取り込めてただで使える。サイトでは、人、動物、モノ、文字などをあしらった多彩なイラストを公開。季節の行事から時事ネタまで「守備範囲」も幅広い。
ヨドバシカメラ梅田店では、約2年前から店内の商品のお知らせに使うようになった。同社の広報担当者によると、少なくとも15店ほどが「いらすとや」のイラストを使った商品のお知らせを作っているという。「かわいいイラストを一緒にしたほうが商品も目に入りやすい」。久田さんも効果はあるとみる。
大阪市教育委員会も昨春に作った内申点評価の説明資料に「いらすとや」のフリー素材を活用した。担当者は「できるだけわかりやすい資料を作らなければいけないと考えました。財政状況が厳しいなか、フリー素材は予算がかからず、手軽に使える。ありがたい存在です」と語る。
転職支援サイト「Green」を運営するアトラエ(東京)は、フリーの写真素材をウェブ上のバナー広告に使っている。担当者は「ウェブ上の広告は飽きられるのが早く、デザインを頻繁に変える必要があります。さまざまなアングルやポーズの写真を無料で使えるのは非常に便利」と話している。
■「自社製品の利用」狙う企業も