立候補届け出の受付会場で手続きをする人たち。告示日の午前中に届け出たのは7人だった=18日、京都府笠置町役場
京都府笠置町議選が23日に投開票され、新議員が決まった。選挙戦には定数8に9人が立ったが、実は告示当日まで候補者がそろわず「定数割れ再選挙」になる可能性もあった。小さな町の「騒動」からは、少子高齢化や若者の流出で担い手不足に苦しむ町村議会の姿が浮かび上がる。
12日、町役場。町議選告示を18日に控え、立候補届け出の事前審査に参加したのは6陣営だけだった。もし立候補が6人なら、その6人は無投票当選となるが、欠員が定数の6分の1を超えるため、公職選挙法の規定で残り2人を選ぶ再選挙が行われる可能性があった。町関係者は「高齢の議員も多いのに、4年後の選挙はいったいどうなるか」と心配する声も出た。
なぜそんなことになったのか。府南部の笠置町は自然豊かな町だが、1990年代には2千超あった人口は現在、府内最小の1436人。65歳以上の高齢化率も46%に達する。2013年11月から1年半ほど町内の出生数がゼロだった時期もあり、町外へ通勤する町民も多い。若い世代の定住や雇用の場づくりが町政の課題になっている。
急速に進む町の少子高齢化は、これまで町議を担ってきた商店主や農家の減少にもつながっている。町の財政難も踏まえ、町議会は00年に議員定数を12から10に減らし、08年にはさらに2減の8にした。全国町村議会議長会によると、町村議の月額報酬は平均21万2349円(昨年7月現在)。だが、財政規模の小さな笠置町議はさらに少ない同17万円。町内には「議員報酬だけでは食べていけない」という声もくすぶる。
それでも笠置町議選(補選を除く)で候補者が定数割れになったことは過去にない。町議経験もある西村典夫町長(66)は告示前、「定数割れになれば、町内外にさらなるマイナスイメージを与えかねない」と語っていた。
町議で3番目に高齢だった西岡良祐(よしはる)さん(72)は今期限りで町議を退き、地元の世話役である区長を別の人から引き継ごうと思っていた。だが、「議員のなり手がいないらしい」と伝え聞くと、心が揺れた。知り合いの町民から「もう一回議員をやってくれんか」と声もかけられ、決断しきれないまま告示日を迎えた。
しかし、締め切り1時間前の午後4時を過ぎても、立候補は定数より少ない7人にとどまっていた。西岡さんは「議長まで経験した者として、定数割れになりそうな状況を見過ごせない」と、立候補を決めた。
定数と同じ8人目の届け出を西岡さんがしたころ、受付会場に1人の男性が飛び込んできた。町内で電気設備業を営む西昭夫さん(48)だった。
西さんは「自分の生活で精いっぱいで、本当は出たくなかった」と語るが、無投票のまま候補者を信任するのは反対だった。「もしきちんと仕事をしない議員がいたとしても税金から報酬が払われるのは納得できない。自分たちが投票して決めた議員だからこそ意見が言える」。西さんが締め切り5分前に立候補を届け出たことで、選挙が行われることになった。
23日の開票の結果、西さんは…