南スーダンで7月に起きた戦闘で市民らが犠牲になった問題を調べていた国連は1日、現地に展開する国連平和維持活動(PKO)部隊が攻撃への対処に「失敗」したとする報告書を発表した。指導力の欠如、準備不足、指揮命令の混乱などが原因としている。
首都ジュバで7月に政府軍と反政府勢力の大規模な戦闘が発生。国内避難民が暮らす国連南スーダン派遣団(UNMISS)の関連施設も襲撃を受け、7月の3日間で保護施設にいた20人以上の避難民を含め、少なくとも73人が死亡した。
国連の現地調査に基づく報告書は「派遣団幹部の指導力不足で、戦闘への無秩序で非効果的な対応となった」と指摘したうえで、交戦規定などを含めて部隊の態勢を見直すよう勧告。戦闘の予兆があったのに、十分な警戒態勢もとらなかったとも指摘している。
政府軍兵士が滞在者らに残虐行為をした疑いが指摘されてきた「タレインホテル事件」についても、報告書は「派遣団が対応に失敗した」と指摘。報告書によると、施設に押し入った政府軍兵士が略奪などを始めた際、市民はUNMISSに通報したが、現場が混乱に陥る中で複数の部隊が出動要請を拒絶。市民らが殺人や威嚇、性的暴力などの「甚大な人権侵害」にさらされることになったとしている。
また、世界食糧計画(WFP)も倉庫の保護をUNMISSに求めたが、支援を得られず、2900万ドル(30億円)相当の食糧や備品などが3週間以上にわたって略奪されたという。
国連の潘基文(パンギムン)事務総長は「報告書の発見に深く動揺している」との談話を報道官を通じて発表。勧告内容を精査し、改善に努めると表明した。UNMISSのオンディエキ軍司令官(ケニア出身)が更迭される。
南スーダンには、日本も陸上自衛隊員を施設部隊として派遣している。(ニューヨーク=金成隆一)