資金不正流用の構図
佐川急便の梱包(こんぽう)資材などを手がける「佐川印刷」(京都府向日市)をめぐる巨額の資金流用事件で、京都地検は15日、同社の元財務・経理担当役員、湯浅敬二容疑者(63)と、元社員で部下の宮口孝容疑者(63)を電子計算機使用詐欺容疑で逮捕し、発表した。地検は2人の認否を明らかにしていないが、関係者によると、湯浅容疑者は「経営陣も承認しており、不正な行為ではない」と容疑を否認する方針だという。
捜査関係者によると、湯浅容疑者は逃亡先のフィリピンで10月に身柄を拘束され、15日午後に帰国して逮捕された。
湯浅容疑者らは、2014年9月24日、知人男性(56)と共謀し、佐川印刷の子会社「エスピータック」(京都府亀岡市)の業務で資金が必要になったかのように装い、知人が管理する宗教法人名義の口座に4億円を入金して、だまし取った疑いがある。
不正流用は昨年1月、外部から情報提供を受けて佐川印刷が調査して発覚した。同社は、シンガポールでの自動車レースの運営や京都府内のゴルフ場の買収、モンゴルの金融機関の増資などに計約90億円が使われたとみている。社内調査に対して湯浅容疑者は「将来の個人的な資金を確保しようと思った」と関与を認め、依願退職した。その後、出国して一時行方がわからなくなっていた。
一方、関係者によると、湯浅容疑者は、資金流用は経営陣の指示による裏金づくりのためだった、との趣旨の手紙を京都地検に提出している。佐川印刷はこの手紙について、取材に対し「当該書面に記載されているとされるような事実は、一切ございません」とし、経営陣の関与を否定するコメントを出した。