夫がうつ病を悪化させて自殺したのは、発症後の過労が原因だとして、東海地方に住む30代の妻が国を相手取り、労災保険の不支給処分の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が1日、名古屋高裁であった。揖斐潔裁判長は、国の処分を取り消した一審・名古屋地裁判決を支持し、国側の控訴を棄却した。
判決などによると、自殺したのは東海地方の清掃会社に勤務していた当時30代の男性。2009年4月に清掃用品を販売する関連会社に移り、8月にうつ病を発症した。その後、10月の東京事務所の開設で東京出張の機会が増え、売り上げ目標達成に責任を持つようになり、うつ病が悪化。男性は10年3月に自殺した。
厚生労働省の労災認定基準では、うつ病発症後の悪化については、生死に関わる業務上のけがなど極度のストレスがかかる「特別な出来事」が必要と定めている。
高裁判決は「強い心理的負荷で悪化した場合、業務での心理的負荷の程度などを総合的に検討して、判断するのが相当だ」と指摘。出張の増加や営業成績の低迷、上司の叱責(しっせき)、死亡3カ月前の時間外労働(月約68~約108時間)などがあったことを踏まえ、「業務による心理的負荷と、うつ病の悪化による自殺には因果関係がある」と認めた。
遺族の代理人弁護士は「労災の認定基準によらず、総合的に判断した画期的な判決だ」と話している。