講演会の資料を前に話す神谷則明さん=名古屋市緑区尾崎山の自宅
中国東北部(旧満州)で細菌兵器の開発のために人体実験をしていたとされる旧日本軍731部隊。その軍属だった亡父について、名古屋市緑区の元高校教諭神谷則明さん(66)が語り始めて20年余り。4年前に脳出血で倒れたが、昨秋に活動を再開し、父が語った戦争を伝え続けている。10日にも同区で講演する。
神谷さんが、父の実さん(1997年に82歳で死去)の過去を不審に思ったのは30年以上前。精肉店の商売一筋だった父が731部隊の新聞連載を切り抜き、神谷さんが持っていた本も借りていった。
「知り合いでもいるの?」。そう尋ねると、父は口を開きかけた。しかし、母がきつく「お父ちゃん」と止め、話は途切れた。
初めて聞けたのは89年。勤務先の学園祭で生徒が戦争についての展示を計画した際、父に改めて問うた。母は亡くなっており、父はもう隠さなかった。
40(昭和15)年、高給に引かれた父は何も知らずに731部隊の軍属に応募。初めは炊事係だったが、途中から人体実験用の捕虜の管理に携わったという。試験管にペスト菌を持ったノミを入れて捕虜の腕に押し当てたこと、撤退時に証拠隠滅のため殺した捕虜の遺体搬出を手伝ったこと……。重い告白だった。
父をさらし者にしていいのか。神谷さんはためらった。この時は生徒には父を会わせず、「知人の証言」として紹介した。当時、頼まれた講演でも「知り合いに聞いた話」とぼかした。
転機は95年夏。肺を病んでい…
有料会員に登録すると全ての記事が読み放題です。
初月無料につき月初のお申し込みがお得
980円で月300本まで読めるシンプルコースはこちら