韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領に対する弾劾(だんがい)訴追案の採決を控えた国会前で8日、可決を目指して座り込みを続ける野党と、反対を訴えるプラカードを掲げる保守団体のメンバー=ソウル、東亜日報提供
韓国の国会は9日の本会議で、朴槿恵(パククネ)大統領の弾劾(だんがい)訴追案を採決する。野党3党に加え、与党内で朴氏と距離を置く「非朴派」も賛成に回り、可決される可能性が高まっている。可決されれば大統領の権限は停止され、黄教安(ファンギョアン)首相が代行する。朴氏と支援者のチェ・スンシル被告らの疑惑に端を発した政局は、最大の山場を迎える。
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朴氏はチェ被告らと共謀し、財閥企業などに財団への資金拠出を強要したなどとして、野党側が弾劾訴追案を提出していた。弾劾訴追案は8日午後の本会議で報告され、今国会の会期末になる9日午後に採決されることになった。
韓国の調査機関「リアルメーター」は8日、5~6日に実施した世論調査で弾劾に「賛成」が78・2%だったと公表した。
弾劾訴追案は国会議員300人のうち、200人以上の賛成で可決される。野党3党と無所属議員を合わせた数は172人で、与党から28人以上の賛成が必要になる。
与党は弾劾を求める世論などを踏まえ、採決は自主投票で臨むことを決めている。非朴派は8日の会合で可決に向けて最善を尽くすことを確認した。非朴派の幹部は、賛成議員が220人に届く可能性があるとの見方も示した。賛成票を投じる議員は朴氏に近い「親朴系」にも出始めているとの見方もある。
一方、野党3党は8日、弾劾訴追案が否決された場合、国民の意思を反映できなかった責任をとるため、所属議員全員が議員辞職することを決めた。
可決された場合、憲法裁判所が180日以内に弾劾するかどうかを決める。弾劾が決まれば、60日以内に大統領選が行われる。
韓国外交省報道官は8日の記者会見で、可決された場合の対応についてコメントを避けた。ただ、12月中の開催で調整が続いている日中韓首脳会談については「議長国の日本を中心に日程を協議中だが、まだ確定していない。日程が年内に確定されない可能性も念頭に置いている」と述べた。
一連の事件で韓国検察は8日、チェ被告のめいのチャン・シホ容疑者を強要などの罪で起訴した。起訴内容によると、チャン被告は「韓国冬季スポーツ英才センター」を設立し、事務総長に就任。チェ被告らと共謀し、サムスングループに後援金名目で計16億2800万ウォン(約1億6千万円)を払わせたという。(ソウル=東岡徹)