仰向けになった零戦。所属を示す「廣嶋縣産報呉支部號」「報國―515」の文字や数字が読み取れた=9月、ソロモン諸島ガダルカナル島、橋本弦撮影
ソロモン諸島ガダルカナル島の密林。村の男が山刀をふるって導いた先に、零戦「報国515号」はあった。2008年に発見されたという。機体には「廣嶋縣(ひろしまけん)産報呉支部號(ごう)」「三菱2666號」「製造年月日2―3―31」の文字が残る。
特集「戦火の残響」
「戦火の残響」写真特集はこちら
「産報」とは「産業報国会」の略で、太平洋戦争が始まる約1年前の1940年11月に発足した労使一体の職域統制組織だ。製造年の「2」は日本書紀をもとにした紀元「皇紀2602年」で、西暦1942年、昭和17年を意味する。
パラオや北マリアナ諸島で見た零戦の残骸より、保存状態は良かった。パイロットが分かるかもしれないと思い、帰国後に研究者や資料にあたった。
発見当初は、垂直尾翼に「E1―108」という識別番号と小隊長機を示す白線が残っていたという。識別番号は、旧日本海軍の空母「翔鶴(しょうかく)」に所属していた戦闘機隊の8番機を意味していた。さらに、イタリアと豪州の研究家が4年前の共著で、翔鶴の記録から搭乗者を「指宿正信大尉か新郷英城大尉」と推定していた。機体の損傷の少なさから、島に不時着して生還した事例のうち、小隊長級の士官を挙げたとみられる。
現代史家の秦郁彦さん(84)…