これも福岡名物!?海水入りの水道水
福岡市役所1階のカフェで、「飲む海水」のペットボトルが売られているのに気づいた。血圧が上がりそうな商品だなと手に取ると、塩分はゼロ。水道水にも同じ海水から作った真水が使われているという。いったいどんな仕組みなのか。
福岡市東区で福岡地区水道企業団が運営する「海の中道奈多海水淡水化センター(まみずピア)」を訪ねた。プラント室にはポンプの音が響き、水を通して濾過(ろか)する筒状のものが無数に並ぶ。2005年に稼働が始まり、最大生産能力は全国1位の1日5万トン。国内に約60ある同種施設のうち、1日1万トンを超えるのはここと沖縄県の1施設だけだという。
取水場所は玄界灘沖合の海底。上に砂を敷いた管から海水を取り込み、特殊な膜でこして細菌や微粒子を除去する。さらに、髪の毛ほどの細さの糸が詰まった「逆浸透膜」で塩分を取り除く。10トンの水から取れる「海淡水(かいたんすい)」(真水)は6トン。センターの宮島隆所長は「回収率60%は世界最高水準」と胸を張る。世界中の自治体や企業の関係者が視察に訪れる。
海淡水は2カ所の混合施設に送られ、川から取った水と混ぜられて福岡市東区と新宮町、古賀、福津、宗像の各市の一部に給水されている。海淡水が含まれる割合は時と場所によって違うという。
こんな方法をとっているのは佐賀県境から東の海側に広がる9市8町の「福岡都市圏」に1級河川が一つもないからだ。水道用水の4割近くを圏外の筑後川水系から引いている。海淡水は濾過膜の交換費用や電気代がかさみ、コストは川の水の倍以上にのぼるが、域内での「自助努力」として取り組まれた経緯がある。
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