表彰式後の記念撮影でボルト(右から4人目)ら金メダルのジャマイカと同じ高さの台に乗った山県亮太と片足をかけた飯塚翔太。(左から)ケンブリッジ飛鳥、桐生祥秀、飯塚、山県=諫山卓弥撮影
銀メダル獲得で日本中を沸かせた男子400メートルリレーのメンバー4人。中でもアンカーとしてジャマイカのウサイン・ボルトと競り合ったケンブリッジ飛鳥の存在感は際だった。だが、このメンバーからケンブリッジを外す選択肢も、直前まで日本のコーチ陣の案の中にあった。
リオ五輪本番を目前にした7月下旬、山梨県の富士北麓公園で行った記録測定。ストップウォッチを見た土江寛裕コーチが「ええ!」と驚いた。37秒7。北京五輪で銅メダルを獲得した「レジェンド」4人が、2007年に出した当時の日本記録38秒03を大きく上回っていた。
「金メダルの可能性もある」と全員がはっきり自覚した瞬間だった。この時、笑顔でタイムを聞いていたアンカーは桐生祥秀。ケンブリッジは走っておらず、代わりに補欠の高瀬慧が3走でメンバー入りしていた。
リレーの走順は、補欠の2人を含めた6人の走りの特性を考慮して、2パターンに絞り込まれていたが、本番と同じケンブリッジを入れた組み合わせの方が、0秒2ほど遅かった。
土江コーチはぎりぎりまで高瀬に「可能性はあるぞ」とメッセージを送っていた。「桐生が外れて、3走高瀬、4走ケンブリッジの可能性もゼロではなかった。誰が走ってもメダルを狙えるメンバーだった」と、当時の悩ましい胸の内を明かす。
最終的に走順が決まったのは、…