AIとの対局について語る井山裕太六冠=東京都千代田区、諫山卓弥撮影
囲碁・将棋界にAI(人工知能)旋風が吹き荒れている。プロと互角以上に戦うAIに苦しめられてきた人間側だが、今春、ついに棋界の第一人者が勝負の舞台に立つ。囲碁は井山裕太六冠(27)、将棋は佐藤天彦名人(28)。戦いに向けた抱負と、圧倒的なスピードで進化するAIを迎えた棋界の展望を聞いた。
■囲碁・井山裕太六冠
昨年3月、世界最強棋士の一人、韓国の李世乭(イセドル)九段を4勝1敗と圧倒したAI「アルファ碁」の出現は、私に限らず囲碁界にものすごく大きな衝撃と影響を及ぼしました。今はアルファ碁が試した手が世界のトップ棋士の間で大流行しています。
私が3月に対戦するAI「Deep Zen Go(ディープゼンゴ)」も、少なくとも1年前まではとてもじゃないけれどプロと互角に打つレベルではなかった。それが昨年11月、趙治勲(ちょうちくん)名誉名人に三番勝負で負け越したとはいえ1勝を挙げたのは驚異的な進化であり、さらにパワーアップしてくるのは間違いないでしょう。たいへんな戦いになると思いますが、AIの打つ手を実際に対局して感じてみたいという思いは常にあったので、非常に楽しみです。
実際にAIと対局した李世乭さんは「今まで自分たちがやってきたことは正しかったんだろうかと思わされた」とコメントしています。そう思わせたアルファ碁は、うわさレベルではさらに強く、とてつもないレベルに達していると聞きます。囲碁というのはどこまで深いものなのか、強くなれるものなのか、純粋に興味をひかれます。
アルファ碁の棋譜を見ると、部分的なヨミでは常に正解を打っている感じでもなく、まだまだ人間の方が上かと思いましたが、人間的にいう大局観というのか、部分的に最善でなくても全体では遅れていない、むしろリードしている局面が多かったように感じました。
AIと人間の対局が少ない段階…