第2次世界大戦などで亡くなった戦没者の遺骨収集で、政府はDNA鑑定の対象を歯だけでなく、手足の骨にも拡大する検討を始めた。鑑定の精度を重視して歯に限っていたが、沖縄などの激戦地では歯が残っていない遺骨も多い。遺族の要望を踏まえ、身元特定の可能性を広げる考えだ。
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菅義偉官房長官が5日の記者会見で「専門家の意見を参考にしながら、検討していきたい」と明らかにした。専門家による「鑑定人会議」の意見を聞いたうえで、早ければ今年度中にも正式に決める。
DNA鑑定は2003年度に開始。高い精度で身元が分かる核DNAを抽出しやすい歯を検体とし、1064人の身元を特定した。ほとんどはロシア・シベリア地域の抑留犠牲者で、沖縄や南方地域の犠牲者は歯が残っていないため鑑定できない遺骨も多い。
そこで厚生労働省は昨年6月、大腿(だいたい)骨や腕の骨などから核DNAを抽出している米国の状況を確認したところ、5割程度で成功していた。多くの遺骨から核DNAを抽出できる歯より確率は低いが、鑑定技術の向上で手がかりになる可能性があることが分かった。
海外戦没者は沖縄なども含め約240万人で、そのうち約127万柱の遺骨が帰還。近年は歯がない状態の遺骨を毎年、数百人規模で収集している。手足の鑑定が実施されれば、こうした遺骨が対象となりそうだ。(井上充昌)