虎屋の黒川光博社長=東京都港区、恵原弘太郎撮影
老舗和菓子屋の虎屋。500年ほど前の室町時代後期に京都で創業してから、質の高い和菓子を世に送り出してきました。時代の荒波が押し寄せても、存続した秘密はどこにあるのでしょうか。17代当主の黒川光博社長に聞きました。
黄門様へ饅頭…今やカフェも 虎屋、挑み続けた500年
――創業から5世紀。どうしてそんなに長く会社が存続したのでしょうか。
「大きな要素として思うのは、いつの時代でも誠心誠意、仕事をしてくれた人がいたのだろうということです。根底にあるのは、人です。働いている人と経営者の間に信頼関係があること。社員が一生懸命働こうと思ってくれることが重要です。9代当主が江戸時代にまとめた掟書(おきてがき)を読んでも、当時の人々が今と変わらない、真面目な姿勢で仕事にのぞんでいたことがうかがえます」
「(15代当主の)祖父がなくなる直前、人事異動があったのですが、病床にいた祖父に対して、『今回は若い人たちを思い切って抜擢(ばってき)しました』と報告しました。そのときに祖父は本当に一言だけ、『古い人も大切にね』と言ったのです。他にもいろんな言葉をかけられたと思いますが、その言葉が非常に印象に残っています。働いている人たちを大切にしなければいけない、という目線は過去から引き継がれているのかもしれません」。
「歴史があることはありがたいことではありますが、歴史があるから将来が保証されるわけではありません。長い歴史を感じながらも、『大切なのは今』と社員に言い続けています」
――91年に社長に就任しまし…