経営難の企業が雇用を維持するため、国が休業手当の一部を助成する「雇用調整助成金」制度で、2013~15年度に約54億3千万円の不正な受給が発覚し、このうち4割を超える約23億8千万円が返還されていないことが厚生労働省のまとめでわかった。同省は不正受給した企業に返還を求めており、応じない場合は刑事告訴したケースもある。
同省が全国の労働局のデータをとりまとめた。未返還の金額が明らかになるのは初めて。
同省によると、15年度までの3年間にこの助成金を受給したのは全国の21万6762社で、計約657億円。不正受給が発覚したのは379社で計約54億3千万円にのぼった。企業は受給の際、従業員の出勤簿などを労働局に提出して審査を受ける。しかし、休業させたと偽ったり、社員の訓練をしたと申告しながら社員を働かせていたりする手口が後を絶たないという。
不正が発覚した場合、各労働局の職員が企業を訪問するなどして返還を督促する。返還計画を立てさせるが、元々資金繰りに困っており、滞ることが多いという。不正を認めなかったり、調査に応じなかったりした場合は、企業名などを公表。返還の意思がなく手口が悪質な企業は刑事告訴することもある。(小林孝也、伊藤和行)
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〈雇用調整助成金〉 景気変動の影響で売り上げが減った企業が、雇用を維持するために従業員を休業させた際に国から支給される助成金。直近3カ月の売上高や生産量などの月平均が前年同期と比べ10%以上減ったことなどが要件で、従業員1人につき1日7775円が上限(昨年8月1日現在)。教育訓練をした場合はさらに1200円が加算される。財源は事業者が納める雇用保険料。制度は1981年に始まった。