農作業を終えた内容をスマホで入力する「鍋八農産」の従業員(トヨタ自動車提供)
トヨタ自動車は17日、大規模農家らと連携した効率的なコメづくりの実証実験の結果を発表した。スマホで作業データを共有し、現場での「カイゼン」の取り組みを進めやすくする。田植えのための苗の資材費を約3割減らし、1ヘクタールあたりの作業時間も約2割短くすることができたという。
兼業農家が大半を占める国内のコメづくりは大規模化が遅れている。高齢化などで農業法人などが引き継いだ水田も広範囲に散らばり、農作業を効率的に進められない課題を抱える。
トヨタが開発したのは作業全体の管理システム「豊作計画」。愛知県弥富市の農業法人「鍋八農産」などが作業データを集め、システムを改善してきた。企業と農家の連携を進める農林水産省の補助金も使った。
同法人は、約2千カ所に散らばる約140ヘクタールの水田を11人で作業している。実証実験では、作業員一人ひとりが管理システムが入ったスマホを持ち、画面で作業場所や内容、次の作業などを共有。作業全体の進み具合やトラブルなどをスマホで把握でき、応援の手配などが効率的にできるようになった。田植えに必要な苗の数を予測する精度も高め、苗の廃棄率を約22%から2%に減らした。
現場のカイゼンに詳しいトヨタ社員の指導も受けた。同法人の八木輝治社長(46)は「田植え期の黄金週間はまったく休めなかったが、2年前から交代で2日ずつ休めるようになった」と話す。トヨタは2~3年以内にサービスを一般に売り出したい考えだ。(編集委員・小山田研慈)