5月初旬にあった今季の世界耐久選手権(WEC)第1戦スパ・フランコルシャンで優勝したトヨタ車のドライバー。左からセバスチャン・ブエミ、中嶋一貴、フェルナンド・アロンソの各選手(トヨタ自動車提供)
世界最高峰の自動車耐久レース「ルマン24時間」が6月16、17両日にフランスで開かれる。最大のライバルだったポルシェが撤退し、近年は惜敗続きのトヨタ自動車は初優勝に期待を膨らませる。29日には東京都内で報道向けの説明会が開かれ、ドライバーらが決意を述べた。
「毎年期待を裏切り続けてきた。今年勝たなくて、いつ勝つんだと皆さん思っているはず」「今年こそ24時間走り抜いて、表彰台の一番上をめざす」
ルマン24時間でトヨタのドライバーを務める中嶋一貴選手(33)と小林可夢偉選手(31)は力を込めた。
ルマン24時間は仏西部のサルテ・サーキット(1周13・629キロ)を舞台に、3人のドライバーが1台の車を交代しながら24時間運転し続け、その距離を競う。2012年からは同年に始まった世界耐久選手権(WEC)に組み込まれ、今年はその第2戦との位置づけだ。
トヨタは1985年に初参戦。以来、過去19回の挑戦で5度の準優勝を数えながら、優勝を逃してきた。2016年はレース終了の3分前まで首位を走りながら、車両トラブルで逆転負け。予選で最速タイムを記録した17年も、車両トラブルが続き8位で終わった。
昨年、初めて現場でレースを見守った豊田章男社長は「私たちのクルマを信じて走ってくれたのに(ドライバーたちに)本当に申し訳ない」とコメント。「もっともっと技術に磨きをかけ、熟成させ、努力を重ねる」と雪辱を誓った。
レース通じて技術高める
ルマンへの参戦を続ける背景には、レース制覇への思いに加え、レースを通じて技術を高めようという考えがある。トヨタはハイブリッドシステムを搭載したモデルで参戦。激しい技術競争の結果、現行モデルは6年前に比べて燃費を35%向上させたという。
昨春には社内でモータースポーツを担当する部署を「カンパニー」に格上げ。開発から営業までモータースポーツに関わる担当者が一体となり、一つの会社のように取り組める態勢とした。トップの友山茂樹副社長はカンパニーの目的を「レース活動で得た知見を商品として世に出し、新たな客層の開拓と収益に貢献すること」と説明する。
昨秋にはスポーツカーブランドの「GR」を新たに立ち上げ、今年1月にはWEC参戦モデルを元にしたハイブリッドスポーツカーの試作版も発表した。
トヨタは今シーズン、WECのドライバーにF1で活躍するフェルナンド・アロンソ選手(36)を起用し、注目を集めた。さらに昨年までルマンで3連覇のポルシェは今年、WECから撤退。ライバル不在となったトヨタは、5月にベルギーで開かれたWEC第1戦で1、2位を独占した。
トヨタ幹部は「ポルシェが撤退した中での参戦継続は重い判断だった」としたうえで、ルマン初制覇に期待をにじませる。「昨年の反省をいかし、強いクルマと強いチームをつくった。(優勝は)当然狙っている」(初見翔)
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〈ルマン24時間〉「インディ500」「モナコ・グランプリ」と並ぶ世界3大レースの一つ。1923年に始まり、今年で86回目。日本車が優勝したのは91年に外国人ドライバーが乗ったマツダだけ。日本人ドライバーは95年に関谷正徳、2004年に荒聖治が外国車に乗って優勝している。