噴煙を上げる御嶽山火口=2014年9月27日午後2時13分、朝日新聞社ヘリから、池永牧子撮影
2014年9月27日に起きた御嶽山(長野・岐阜県境、3067メートル)の噴火災害をめぐり、死亡した登山者5人の遺族が、国と長野県を相手に総額1億5千万円の支払いを求める国家賠償請求訴訟を起こす。噴火警戒レベルの引き上げを怠ったなどと主張。25日に長野地裁松本支部に提訴する予定だ。
噴火災害では58人が死亡、5人が行方不明となった。遺族側の代理人弁護士によると、今後、原告が増える可能性がある。
訴えは、噴火前の14年9月10日と11日に火山性地震が1日50回以上観測されていたと指摘。火山性地震が1日50回以上観測された場合、気象庁は基準に従い「12日朝にはレベルを1(平常。現在は「活火山であることに留意」と変更)から2(火口周辺規制)に引き上げる義務があった。2に引き上げられていれば、火口から半径1キロ以内が立ち入り規制され、死者が出ることはなかった」と主張している。
長野県に対しては、山頂付近に設置していた地震計が13年8月から故障していたのに放置していたと指摘。「地震計が正常に動いていれば、精度の高いデータを気象庁に提供でき、レベルが2に上げられていた可能性が高い」と訴える。
気象庁総務課は「まだ提訴前の段階で訴状もなく、内容も分からないためコメントすることはできない。裁判という話になれば、内容を確認して適切に対処する」とした。
長野県の阿部守一知事は「報道は承知をしております。県としては、御嶽山噴火災害の教訓を踏まえ、国や市町村、関係機関と連携し、火山防災対策の強化に引き続き全力で取り組んでまいります」とのコメントを発表した。
菅義偉官房長官は17日午前の記者会見で「具体的なことは承知していないが、訴えられたということであれば、国として真摯(しんし)に受けとめてしっかり対応していくということに尽きる」と語った。