飲み屋に行く前に銭湯へ。「ゆ」と染め抜かれたのれんが情緒を醸し出す=大阪・新世界
大阪で何度か飲んでいるうち、瓶ビールの呼称が東京と違うことに気づいた。大瓶は「おおびん」ではなく「だいびん」。中瓶は「ちゅうびん」だが、小瓶は「こびん」ではなく「しょうびん」なのである。
小泉信一の「さあ、もう一軒」
東と西の文化の差なのだろうか。
「でも大阪はユーモラスに聞こえます。オシャレで歯切れがいい言い方を意識する東京とは明らかに違うのです」と酒場詩人・吉田類さん。大阪の喫茶店ではアイスコーヒーを「レー(冷)コー」と縮めて言う人もいる。本当かどうかはわからないが、クリームソーダを「クーソー」と呼ぶ人もいるそうだ。
さて、今宵(こよい)めざすはディープな下町、新世界。土手焼きや串カツのソースのにおいがぷーんと路地に漂う古典的な酒場スポットである。「二度づけお断り」のはり紙。立ち飲みのおっちゃんたちが焼酎のお湯割りをちびちびやっている。
大阪のシンボル通天閣が見えてきた。その足元には何と銭湯がある。「新世界ラジウム温泉」。露天ぶろから通天閣が見える。温泉じゃないのに温泉。細かいことにこだわらないも大阪らしい。微弱な電流が流れ、筋肉痛や腰痛に効くという電気風呂もある。
風呂上がり、銭湯の近くで、八…