最高裁決定のポイント
検索サイト「グーグル」の検索結果で逮捕歴などが表示されるのは人格権の侵害だとして、男性が削除を求めた仮処分申し立てで、最高裁第三小法廷(岡部喜代子裁判長)は削除を認めない決定をした。
グーグル検索結果の削除、初の判断基準 最高裁が示す
ネット検索で過去の犯罪歴をいつまでも閲覧されることに対し、ヨーロッパと同様に「忘れられる権利」が認められるか。最高裁はその点への答えは示さなかったが、検索結果を削除するには高いハードルがあるという判断を示した。
そもそも検索結果は、記事などを情報発信するサイトへのリンクにすぎない。グーグルは訴訟で「機械的に結果を表示しているだけで『表現』ではなく、削除請求は元のサイトにするべきだ」と主張していた。
だが、最高裁は検索結果について「表現行為の側面を持つ」とし、「現代社会における情報流通の基盤として大きな役割を果たしている」と位置づけた。こうした機能を制約して削除するのは、「プライバシー保護の利益が明らかに上回る場合に限られる」と述べた。従来の出版物をめぐる判例では「明らかに」とまで述べておらず、検索結果の削除は出版物よりハードルを高めたともとれる。
ただ、ごく軽微な犯罪歴でも繰り返し検索され、不都合を受ける人はいる。具体的に「どんな場合に削除が認められるのか」は、今後の判例の蓄積に委ねられる。検索事業者自身や、利用者である市民の側も、表現の自由とプライバシーのバランスをどうとるか、議論を深める必要がある。(千葉雄高)