朝日新聞デジタルのアンケート
女子力動画で人気が急上昇したNMB48の吉田朱里さんが、自身の思いや女子力についてコメントを寄せてくれました。ところで今回、「女子力について考えたい」と提案したのは、6人の女性記者です。どんな思いからなのか。読者のみなさんの意見に触れていま、何を考えているのか。紹介させてください。
「女子力」アンケートに寄せられた意見はこちら
■「女子力動画」NMB吉田さんに聞く
NMB48の吉田朱里さん(20)は「女子力動画」で女性人気を獲得、活動の幅を広げています。昨年、6月のAKB48選抜総選挙の77位から、年末のNHK紅白歌合戦の総選挙で一気に6位に選抜。ユーチューブで始めたチャンネル登録者は約16万人、ツイッターのフォロワーは約29万人です。吉田さんに「女子力」について尋ねたところ、コメントをくれました。抜粋して紹介します。
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ユーチューブの「女子力動画」は2016年の2月からスタートしました。自分の好きなことを女の子のファンの方と共有したかったのと、これだけ人数のいるグループの中で何か一つ、私と言えばこれ!という武器が欲しかったからです。
とにかく、女性のファンの方が増えました。共通の話題がたくさんできたし、いろんな相談をしてくださるようになって、憧れって言ってくださる方もすごく増えました!
そんな中、今まで応援してくださった男性ファンの方にさみしい思いをさせて申し訳ないなと思っていたんですが、こうして「女子力動画」がいろんなお仕事につながって、紅白選抜6位という結果につながっていることをすごく喜んでくださって、アカリンのこれからがすごく楽しみ!と言ってくださっています。
紅白選抜6位という数字には、本当にびっくりしました。あれは夢だったんじゃないかといまだに疑っちゃいます。この結果は「女子力動画」の効果がやっぱり大きいと思います。
たくさんの動画の視聴者さんが、いつも動画を楽しませてもらっているお礼だよ!って投票してくださって、ユーチューブの力のすごさも感じました。
印象に残っているのは、「アイドルの前髪はどうして崩れないのか」っていう動画ですね。アイドルである私だからこそ作れた動画だし、あの動画をきっかけに私を知ってくださった方もたくさんいるので、作ってよかったなぁと思います。今後も、アイドルというのを一つの武器として、いろんな動画を考えていきたいです。
私は、メイクとかオシャレとかが好きだから発信しているだけであって、女子はこうあるべきだ!とは思っていません。でも、多くの女子にとって興味のあることが「メイク、オシャレ」だと思うし、身近なことだと思うので、たくさんの方が興味をもってくださったんじゃないかなと思います。
女の子は、自分を知って磨くことでどれだけでもかわいくなれると思います。私が発信していくことがたくさんの女の子の「かわいい」につながればいいなと思っています。
女の子に生まれたからには、思う存分女の子を楽しんで生きてほしい。女の子の楽しさがたくさん詰まっているのが「女子力」なんじゃないかな。
■息子におままごとセット
「女の子なんだからお手伝いしなさい!」。弟がいますが、子どもの頃、親に食器洗いなどをするように言われたのは私だけでした。新聞記者になる時も、男性の先輩が「女の子なのに、やめた方がいいんじゃない?」。女子力という言葉に窮屈さを感じてしまうのは、そんな記憶の蓄積からかもしれません。
2児の母になった今、子どもには男性性や女性性を押しつけないようにしています。本人が欲しがるので、息子におままごとセットを、娘に電車のおもちゃを買ったことも。どこで覚えたのか、最近、3歳の娘がしなをつくって、「あら、何かしら?」と猫なで声で言うようになりました。むむ、これって女子力?
娘には性別にとらわれず自由に生きてほしい。でも、無理せず女の子を楽しむ生き方ができるなら、その方が幸せなのかな……。親心は複雑です。(杉山麻里子)
■無形の圧力に「もやもや」
アンケートで、女性のうち10代だけは、女子力という言葉を肯定的にとらえている人が、否定的な人を上回りました。
私も、性別を理由にした無形の圧力に「もやもや」を感じ始めたのは、社会に出てからでした。入社1年目の秋、思い切り体を動かせると張り切って臨んだ同業他社との野球・芋煮大会では、1回打席に立っただけで「女性陣は芋煮作って」。そんなささいな、でも忘れがたい「なぜ」が度々ありました。
いちいち目くじらを立てずやり過ごすのが「大人の女性」と思ってきましたが、それは正解だったのかと自問するようになったのは、ここ数年のことです。女子力をテーマにした背景には、そんな影響がありました。子どもたちには「女(男)だからこうしなきゃ」ではなく、「自分だからこうしたい」が当たり前に言えて、受け入れられる社会で生きてほしいと思います。(三島あずさ)
■笑顔でかわしてきたけど
女性は男性を立てるもの、という家庭に育ちました。新聞社に入った後も「お酌を」と取材先との会食に呼ばれたことがあります。いつまで男性を立てないといけないの?と「もやもや」しつつ、そんなものかな、とやり過ごしてきました。
でも、仕事をがんばれば「結婚できなくなるよ」と言われ、興味があったフラワーアレンジメントを習うと「そんなに女子力上げてどうするの」と言われる。笑顔でかわしつつ、いつしか女子力はあまり好きではない言葉になっていました。
今回の取材中、「かわいがられてやっていくのが現実的」という意見を聞きました。たしかに、いちいち「ん?」と思うのは疲れてしまう。言わないほうが角も立たないけれど、黙っていたらこの先もしんどさを抱え続けることになるのでは……。まだしばらく、「もやもや」は続きそうです。(山本奈朱香)
■「こうありたい」に「いいね」を
小学校入学当時、青色のバッグの「絵の具セット」を注文したら、男性の担任に呼び出されました。「女子は全員、赤を選んでいるけど、いいのか」。私は「青が好きだから」と、男子と同じ青色のバッグの絵の具セットを6年間使い続けました。
女子力が同調圧力として、また批判的・性差別的な意味で使われるのはうんざりですが、今回、C Channelの森川亮社長とNMB48の吉田朱里さんの取材を通じ、女子力の前向きな力を感じました。
あらゆる物事に対し、男性より女性の方が「自分事」として、アイデンティティーに問いかけて論じる傾向があるのでは、と思います。女子力について「こうあるべきだ」と悩むより「こうありたい」と前を向きたい。誰もが好きな色を選べて、互いに「いいね」と言い合えるのが理想です。(林亜季)
■多様な受け止めに戸惑う
性別を意識せずに過ごした女子高から男が圧倒的多数の大学に入り、女であることに自信が持てない日々を送りました。学内のサークルであっても、当の大学の女子学生は「入部お断り」ということが珍しくなかった時代でした。
女子力という言葉はなかったものの、それらしきものさしは厳然とありました。性別に関係なく対等な仲間意識が持てると信じていた男の学友からも、しばしば「オメーは女じゃない!」と、「『女』でない女」扱いを受けました。男の輪にも完全には入りきれない、ねじれた疎外感。気配り上手な、あか抜けた女子学生がまぶしくて、まねしたいと思いながら、どう手をつければいいか分からないまま。
「女」を相当こじらせていた20代を経て40代のいま、女子力に向き合いながら、この言葉の受け止め方の多様さに、正直、戸惑っています。(錦光山雅子)
■「女」の基準、自分にも?
「女の子は自宅から通える大学に」と言われる友達もいる中、私の選択をいつも応援してくれる両親のもとに育ち、仕事でも女子力を求められた経験はありません。
入社以来13年間、仕事のときにスカートをはいたことはありません。すぐ取材に動けるように。仕事の場に女らしさを持ち込みたくない、中性のような存在でいたいとも思っています。肩ひじ張るのではなく、それが自分にしっくりくるからでした。今回、様々な意見を読み、同僚の話を聞いて、最初は自分とは無縁のしんどさだと思いました。でも、逆に私の中に「女」という基準が強くあり、無意識に距離を置いてきたのかもしれないと思いました。
悩みは、孤独をどう生きるか。結婚も出産もしていないことが影響しているかもしれません。「女」を超越できていなかったのかもと感じています。(山田佳奈)