アマゾンの物流倉庫には、「商品棚」を運ぶ自走式ロボットが導入されている=川崎市
電子書籍の登場が日本の出版業界を劇的に変えつつある。テクノロジーの進化は、「黒船」来襲の脅威だけでなく、新しいビジネスチャンスも生む。「最大の書店」となったアマゾンとの距離感に悩む業界の現状を報告する。
アマゾン読み放題「想定外なことも…」 日本幹部に聞く
アマゾン読み放題、人気本消える 利用者多すぎが原因?
「お金が持たなくなった。キンドルアンリミテッドでの配信を中断したい」
昨夏、ある大手出版社の役員は、アマゾンジャパンの担当者からの電話に耳を疑った。
「キンドルアンリミテッド」は、ネット通販大手アマゾンが昨年8月に始めた新サービス。月額税込み980円の利用料で12万冊以上の和書、120万冊以上の洋書の電子書籍が読み放題になる。書籍を提供した出版社は、読まれた実績に応じてアマゾンから代金を受け取る仕組みだ。
サービスが始まると直後から読者が殺到。アマゾンが用意した予算を超えてしまったため、この出版社の本をサービスの対象外にしたいと懇願してきたのだという。「電話一本でいきなり中断したい、と。あまりにも一方的すぎる」。この大手出版社役員は憤る。
講談社もサービス開始早々、好評な自社の書籍の配信が止まり、昨年9月末には全1200点が見られなくなった。同10月に「配信の一方的な停止に強く抗議する」と声明を発表。社長の野間省伸(よしのぶ)(48)は「著者と話し合って提供を決めたのに、著者の方々に説明がつかない」と怒り心頭だ。
アマゾンのキンドルコンテンツ事業本部長、友田雄介(49)は「いくつか想定外のことがあったのは事実で、出版社に対応をお願いした。公式に抗議のような形で出てしまったのは残念」と話す。
アマゾンは日本での紙の書籍の…