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「白ブリーフ裁判官」の息子が医師を目指す理由

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宮崎大学の医学部に通う、おか☆かずさん


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自身の白ブリーフ姿をツイッターで公開し、「白ブリーフ判事」として話題になった東京高裁の岡口基一裁判官。次男の「おか☆かず」こと岡口和也さん(22)は宮崎大学の医学部に通い、医師を目指しています。苦しかった2年間の浪人生活や両親への感謝の思いを語りました。


(withnews)「最初の曲は彼女へのプレゼント」 おか☆かず恋愛事情


■義理のおばが白血病に


医師を目指したキッカケは、高校生の時にNHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」という番組で、心臓外科医の天野篤先生が取り上げられているのを見たことです。年間何百件もの手術をこなし、ほかの医師には手に負えないような患者さんを救う。カッコ良さを感じました。


ちょうどその頃、義理のおばが白血病にかかり、いとこから「医学部に入って救ってほしい」と言われたことも、決め手になりました。その後、亡くなってしまったのですが、子どもの頃から毎週のように遊びに行っていて、とても仲が良かったんです。


父親が裁判官なので、小学生ぐらいの時はずっと「裁判官になりたい」と言っていたんですけど、国語が不得意なので文系は無理だろうな、とあきらめました。


高校は茨城県立土浦第一高校という地元の進学校。僕が入ったバスケ部は当時県内ベスト4に入るぐらいの強豪で、毎日ハードな練習に打ち込んでいました。


勉強の成績は320人のうちで180位とか。苦手な国語ではブービー(下から2番目)をとったこともありました。それでも、進学校に入れたことで「自分は頭がいいから大丈夫だ」とどこか過信していた。必死に勉強してギリギリで受かっただけだったのに、勘違いしていたんです。


センター試験の採点をした時、初めて自分が思い込みをしていたのだと気づかされました。国立の医学部を狙うなら、900点満点のセンター試験で750~800点はとらないといけない。それなのに、僕の点数は571点で、全体の平均点とほぼ同じ。僕ってこんなもんなのか、と。


■孤独だった浪人生活


現役の年は筑波大の医学部を受けたのですが、その点数で受かるはずがありません。浪人して、千葉の柏にある予備校に通い始めました。夏は毎日14時間、2週間続けて勉強し、冬休みには1日17時間やったこともありました。


翌年はイケるかなという感じだったんですけど、センター2日目の数学2・数学Bで事件が起きました。問題が配られている時に、急にトイレに行きたくなってきたんです。行くか行かないか迷っているうちに、テスト開始。そこからずっと、トイレのことで頭がいっぱいになって、まったく問題に集中できませんでした。


頭の中はパニック状態で、何を思ったのか「ここで吐いたら、体調不良ということでやり直しにしてくれるじゃないか」と必死に吐こうとして。体調は万全だったのでまったく吐けなかったんですけど(笑)。結局、普段は9割とれる数学で40点ぐらいしかとることができませんでした。信州大の医学部を受けたものの、2次試験もあまりできず、落ちてしまいました。


2浪目は同じ予備校の東京・市谷にある医学部専門の校舎に通って、2次試験対策をしっかりやりました。土浦第一は浪人する人が多いので、1浪目は周りに友達がたくさんいたんですけど、2年目は校舎も変わって孤独でした。休み時間も一切しゃべらず、勉強していましたね。


その成果もあって、この年のセンターは758点。理科が苦手なので、2次試験に理科がない宮崎大の前期試験を受験しました。私立や後期試験は全部落ちて、ダメなら3浪という状況でした。ネットで合否を確認したところ、自分の番号が見当たらない。「ああ、落ちた…」と絶望しかけたのですが、番号を間違って覚えていたことに気がつきました。


調べ直すと番号が見つかって、隣で見守っていた母と一緒に泣きました。毎日弁当をつくってくれて、僕が落ちる度にガッカリさせてしまった母に、やっと恩返しができたという思いでした。


■仕事一筋な父、頑張る原動力に


一方の父は軽く「おめでとう」ぐらいな感じでした。父は基本的に放任主義で、干渉しないんですよ。お陰で中学・高校と塾にも行かず、好きなことをやらせてもらいました。


単身赴任していて、月に1回帰ってきて。小学生の頃とかはボウリングやカラオケとかで一緒に遊んでくれました。で、遊び終わると、ずっと仕事をしているんです。


ツイッターではあんな感じでふざけていますけど、素顔は仕事の鬼ですね。それぐらいずっと仕事をしている。そういうプロフェッショナルなところ、仕事一筋な姿勢を小さい頃からずっと見てきたことが、いま自分が頑張れる原動力になっている気がします。


昨年はヤフーニュースにも取り上げられて話題になりましたが、父は昔からああいう写真をネットにあげていたので、僕は今さら?という感じでした。「ここまできたか、さすがだな」みたいな。


だから、ヘコんだりとかはまったくありません。父にはむしろ感謝しているぐらいです。父の話題をキッカケにして、いろんな方と話せるのはいいことだなって。僕のツイッターのフォロワーも千人ぐらい増えましたし。


騒動が盛り上がっていたタイミングで、自作曲のミュージックビデオをツイッターに投稿しました。父も僕も目立ちたがり屋。お互いがお互いをネタにしているような感じなんです。


2年浪人してアイデンティティーが失われて、僕は何のために生きているんだろう、僕って何なんだろうという思いがあって……。そんな自分に注目してもらえるのは、うれしかったですね。


自分で曲をつくるのは、受験勉強のいい気晴らしになりました。1浪目のセンターで失敗して、2次試験まで勉強しないといけないといけないのに、全然勉強する気にならない。「このままじゃマズイ、自分頑張れ!」と自分を励ますために、「テスト前」という曲をつくって。2浪目の時も部屋で歌いながら勉強していました。


■目指すはゴッドハンド


受験勉強で大事なのは、むやみに時間をかけることでなく、理解すること。パターンを暗記するやり方だと、ちょっとひねられたら解けなくなるし、どんどん忘れてしまうんです。逆に、白紙の状態から説明できるだけの理解を身につければ、どんな問題でも自分で考えて答えを導き出せる。


いまの医学部の勉強でも、この考え方は生きています。勉強量が膨大で字面だけ覚えようとしても覚えきれませんが、理解ができていればすごく楽になります。将来は心臓外科のゴッドハンドになって、誰にも救えないような患者さんを救いたいです。


僕が受験を通して学んだのは、努力は実るっていう当たり前のことです。受験会場に入ったら、助けてくれる人は誰もいない。みんな一人なんです。そこで支えてくれるのが、過去に勉強してきた自分自身。受験生の皆さんは、自分を信じて全力を出し切ってください。あ、あと試験前にトイレには行っておきましょう(笑)。



(おかぐち・かずや) 1995年、茨城県生まれ。県立土浦第一高校を卒業後、2浪の末に宮崎大学医学部に合格。現在2年生。「おか☆かず」名義で自作曲をユーチューブに発表している。父・岡口基一さんは法曹界のバイブルとされる『要件事実マニュアル』(ぎょうせい)の著者としても有名。(聞き手・神庭亮介)



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