「伯爵邸」のナポリタン=さいたま市大宮区
鉄道の街として栄えてきたさいたま市の大宮駅周辺で、かつてよく食べられていたというナポリタン。新たなご当地グルメ「大宮ナポリタン」として売り出そうという動きが、じわりと広がっている。
大宮駅東口から徒歩約5分。レトロな外観と24時間営業で知られる、1975年創業の老舗喫茶店「伯爵邸」でもナポリタンは看板メニューの一つ。評判を聞き友人と訪れた埼玉県川越市の大学2年、須崎真実さん(20)は「甘めのケチャップでおいしい。すっぱいのが苦手でも食べられる」。
1885年に開業した大宮駅周辺は、車両の新造・修理を担う大宮工場(現JR大宮総合車両センター)が9年後に操業を始めたこともあり、鉄道の街として発展してきた。地元の住吉通り商店会の望月義一会長(74)などによると、最盛期で約5200人に達した大宮工場の鉄道マンらがかつて、駅周辺の喫茶店で、手軽で腹持ちの良いナポリタンを好んで食べていたという。
時代とともに目立たなくなっていったナポリタンを名物として「復刻」しようと、駅開業130周年となる2015年秋に、商店会などが「大宮ナポリタン会」を発足。サッカーJ1大宮アルディージャのチームカラーのオレンジや、武蔵一宮氷川神社の鳥居の朱色も「ナポリタンの色と似ている」と引っかけて、ご当地グルメ化を図った。
会加盟の基本条件は、旧大宮市内(さいたま市大宮、西、北、見沼の各区)に店を構え、県産の野菜を一つ以上使うこと。現在37店舗が加盟しているが、味や作り方は店によって様々で、タイ料理店やうどん屋も。ナポリタン会の会長も務める望月さんは「食べに街へ出てくれば、大宮や、駅周辺の路地の文化の魅力もわかる」とPRする。
雑誌やテレビで取りあげられる機会も増え「大宮の街が活気づいてきた」と伯爵邸の宮城正和社長(67)。「街の一人ひとりが参加しないと定着しない。これからもどんどん魅力を発信していかないと」(佐藤祐生)