鳥取県米子市のラブホテル事務所で2009年、男性支配人(当時54)に暴行を加えて死亡させ、現金を奪ったとして強盗殺人罪などに問われた無職石田美実(よしみ)被告(59)の控訴審判決が27日、広島高裁松江支部であった。栂村(つがむら)明剛裁判長は懲役18年とした一審・鳥取地裁の判決は「事実誤認がある」とし、有罪と結論づけた主要部分を破棄し、無罪を言い渡した。
石田被告は09年9月29日に米子市のラブホテル2階の事務所に侵入。支配人の頭を壁にぶつけ、ひも状のもので首を絞め、保管されていた現金を奪ったとして起訴された。支配人は6年後の15年9月29日に敗血症による多臓器不全で死亡した。
石田被告は捜査段階から関与を否定し、弁護側は無罪を主張。鳥取地裁は昨年7月、強盗殺人罪ではなく、殺人罪と窃盗罪の成立を認め、懲役刑を言い渡し、双方が控訴していた。
この日の判決では、石田被告が事件後に持っていた現金について、「犯人であると強く推認させる」と判断した一審に対し、検察側の立証が不十分だったと指摘。「推定無罪の原則に反し、到底支持することができない」とした。
さらに石田被告が犯人であることを示すのは犯行の機会があったということしかなく、一審は「犯人性の立証が足りず、犯人との認定には事実誤認がある」と結論づけた。
判決後、弁護人の吉岡伸幸弁護士は「よく判断していただいた」と評価し、広島高検の玉置俊二・次席検事は「判決内容を詳細に検討したうえ、上級庁とも協議し、適切に対応したい」との談話を出した。