てるみくらぶの本社には「臨時休業」と書かれた紙が貼られていた=東京都渋谷区、石井潤一郎撮影
格安の海外ツアーで知られ、航空券の発券トラブルで顧客から苦情が出ていた旅行会社てるみくらぶ(東京)が27日、破産手続きに入った。この日午前、東京地裁に破産を申請し、手続き開始の決定を受けた。ツアーの中止などで最大約9万人に影響が出そうだ。払った旅行代金の大半が戻らないおそれがある。
「返金されるのか…」予約の男性困惑 てるみくらぶ破産
代理人弁護士によると負債は約151億円で、申し込みを受けている旅行は約3万6千件(約99億円分)。1件に複数の参加者がいる例が多く、実際に影響を受けるのは約8万~9万人になりそうだという。
国は日本旅行業協会の加盟社から保証金を集め、倒産時に旅行代金を弁済する制度を設けている。記録のある2008年度以降では17件の利用があり、15件で代金の全額が弁済された。ただ、弁済額には上限があり、てるみくらぶの場合は計1億2千万円だ。
山田千賀子社長は記者会見で「本当に申し訳ありません」と声を震わせ、頭を下げた。同社で発券された航空券は今後も原則として使えるが、ツアーに含まれていたホテルやバスは利用できない可能性が高いという。26日に同社を立ち入り検査した観光庁によると、申込者のうち約2500人が出国している。行方不明の情報はないという。
てるみくらぶは札幌や大阪などに支店を構え、年200億円近い売上高がある。航空会社から空席を安値で引き受け、ネットで販売して成長してきた。航空会社が機材の小型化を進めて空席が減って安値で提供されなくなり、約2年前から高齢者に照準を定める戦略に転換。新聞での広告に注力したが、経費がかさんで立ちゆかなくなったという。
東京都渋谷区のてるみくらぶ本社には27日午後、旅行を申し込んだ客が次々と訪れた。入り口に「臨時休業」などの貼り紙が掲げられ、社員による応対はないという。都内の男性(60)は妻とのハワイ旅行を計画し、数日前に64万円を支払った。「会社はなぜ早く状況を説明しなかったのか。振り込め詐欺にあった気分だ」と憤る。別の都内の男性(85)は5月のオーストリアへのツアーを予約し、代金20万円のうち5万円を振り込んだばかり。「だまされたという気持ちと、旅行に行けないくやしさで二重に苦しい」と話す。
2月にてるみくらぶのウェブサイトから韓国・ソウルへの旅行を申し込んだ東京都江東区の会社員の男性(38)は、両親ら家族5人分計23万円をクレジットカードで決済ずみ。25日に同社に電話をかけ続けたが、つながらなかったという。「返金されるのでしょうか」と困惑していた。
問い合わせ先は、てるみくらぶが設けた「お客様専用ダイヤル」(03・3499・7555、平日午前10時~午後5時)か、日本旅行業協会の弁済業務委員会事務局(03・3592・1252)。(石井潤一郎、内藤尚志、有吉由香)