ニャーニャックを鑑賞する天皇、皇后両陛下=3月4日午前、ベトナム・フエの王宮、代表撮影
華やかな民族衣装に身を包んだ若者たちが演奏し、優雅に舞う。幻想的な光景に、天皇、皇后両陛下は盛んに拍手を送っていました。
皇族方の素顔
特集:皇室とっておき
ベトナム訪問5日目の3月4日、両陛下は古都フエで、宮廷音楽ニャーニャックを鑑賞しました。これは日本でいう「雅楽(ががく)」。15世紀から20世紀前半にベトナム王宮で演奏されてきましたが、第2次世界大戦後にバオダイ帝がフランスに亡命し、宮廷そのものが消滅。演奏家たちは職場を失い、フエもベトナム戦争の激戦地となって王宮も被害を受けました。
この復活に尽力したのが、かねてベトナム音楽を研究してきた聖徳大学教授の徳丸吉彦さん(80)です。徳丸さんによると、1994年春、ベトナム政府とユネスコが伝統文化の保存を話し合う国際会議を開くことになり、徳丸さんはベトナムの伝統文化が危機的な状況にあるとして出席を依頼されたそうです。その際、現地で少数民族の村を訪れた際、ニャーニャックを記憶している人たちの高齢化が進んでいることを知り、若手の育成が急務だと実感したといいます。
そして、国立フエ大学の芸術学部に、宮廷音楽専攻コースを新設することを提案。演奏家を探しだし、講師役を担ってもらいました。
しかし、1996年の開講式間際になって、ベトナム共産党の高官から電話があり、「なぜ社会主義国の学生に封建主義の音楽を教えるのか」と追及されたそうです。徳丸さんは「(ベトナムの首都)ハノイやホーチミンの学校では、ハイドンやモーツァルトなどの西洋封建主義の宮廷音楽を教えているではないか」と反論。相手が意見を変え、予定通り開校できたといいます。
2000年夏に1期生11人が卒業。徳丸さんは卒業演奏や卒業論文発表会に立ち会い、「技量が十分であることを感慨深く思った」と振り返りました。
ニャーニャックが演奏された場所は、世界遺産となっている王宮でした。ベトナム戦争での被害を免れた建物を目にし、天皇陛下は「ここは残ったわけですね」「よく残りましたね、木造で」などと感慨深そうに話していました。
4日午後には、フランスからの独立を指導したファン・ボイ・チャウの記念館を訪れました。同じく独立運動を率いたホー・チ・ミンの名前は広く認知されている一方、チャウの功績は長く知られずにいました。その「隠れた歴史」に光をあてるかのように、天皇陛下は印象的なおことばを残しました。
「ベトナムの独立に関わった日…
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