「全国野球場巡り」を出版した斉藤振一郎さん=東京都豊島区
日本にはどれだけ野球場があるのだろう――。そんな疑問から、全国各地の球場を訪ね歩く男性がいる。北は稚内、南は石垣島まで、877球場。その特徴を一冊の本にまとめた。まだ見ぬ「未知の球場」を求め、スコアブックを片手に全国行脚を続ける。
「一般の野球ファンが見向きもしない試合にドラマがあるんです」。元放送作家で、3月に著書「全国野球場巡り」(現代書館)を出版した斉藤振一郎さん(52)はスコアブックを見返し、感慨深そうに語る。
茨城県出身だが、野球漫画「あぶさん」を読んで南海ホークス(現ソフトバンク)のファンになった。球場巡りを始めたのは25歳。当時はフジテレビ系「プロ野球ニュース」などを手がけ、ネタ探しに図書館へ通ううちに、地方紙のスポーツ面を見てふと思いついた。
「今から頑張れば、すべて行けるんじゃないか」。そこから、27年にわたる旅が始まった。常磐線の鈍行列車に乗り込み、最初に訪れたのは茨城県土浦市の市営球場。バックネット裏でスコアをつけ、春季高校軟式野球の関東大会を観戦した。その日の決勝戦は延長18回の再試合に。感動した斉藤さんは土浦に宿をとり、翌日も見届けた。
旅をする上で、自らに課したルールは二つ。写真を撮ることとスコアブックをつけることだ。国会図書館で毎日地方紙をめくり、大会をチェック。徹夜明けでも球場に通い、眠気を飛ばすためペンで太ももを突っつきながら観戦した。
「試合を見なければレストランに行って何も食べずに帰るのと同じ。いい試合を逃したくない、という思いでここまでこれた」。これまで約4千試合を観戦したという。
ほとんどは1人旅。節約のため…