「バベルの塔」の一部と米粒の大きさを比較すると……(朝日新聞出版提供)
ネーデルラント絵画の巨匠ピーテル・ブリューゲルが描いた傑作「バベルの塔」。もし、この塔の実物が、現代の日本に登場したらどのような景色になるのか?
そんな、シミュレーション画像が、今月7日に発売された美術入門書「ブリューゲルへの招待」(朝日新聞出版)に掲載されています。
塔の高さは510メートル。東京タワー(333メートル)と比べてみても、はるかに大きくなりました。
根拠になったのは、東京芸術大学COI拠点の宮廻(みやさこ)正明教授らのチームの検証です。「バベルの塔」の3次元コンピューターグラフィックス映像を作る過程で、絵の中の人の平均身長を170センチとして塔の高さを計算しました。
宮廻教授によれば「塔の直径は高さ以上になるだろう」ということです。
ブリューゲルが描いた「バベルの塔」の絵の実寸は、縦59.9センチ、横74.6センチ。家庭用のこたつテーブルよりも小さいスペースに、米粒よりさらに小さい3ミリ足らずの人間を、約1400人も描きました。
よく見れば、粉をかぶったような白っぽい姿でしっくいやレンガを運ぶ人、クレーンを動かす人、また家畜の世話をする人や、洗濯物を干す人までいます。塔の中ほどに描かれているのは長い行列。教会のような聖なる場所に入っていく人々という説もあります。
今までに多くの画家が「バベルの塔」を描いてきましたが、ブリュールゲルの作品が傑作と言われるのはなぜか。「バベルの塔」を所蔵するボイマンス美術館館長のシャーレル・エックス氏は、ブリューゲルは「神の怒り」ではなく、「夢を実現しようとする人々の挑戦」を描いたからだと言っています。
なお東京芸術大学COI拠点が作成した3次元コンピューターグラフィックス映像は、18日から東京都美術館で始まった「ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル『バベルの塔』展」(朝日新聞社など主催)の会場で見ることができます。「バベルの塔」に描かれた人々が動き出す映像を、巨大スクリーンで鑑賞できます。(朝日新聞出版・斎藤順一)
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ボイマンス美術館所蔵「バベルの塔」展
16世紀ネーデルラントの至宝 ―ボスを超えて―
http://babel2017.jp/
<東京会場>東京都美術館 2017年4/18(火)~7/2(日)
<大阪会場>国立国際美術館2017年7/18(火)~10/15(日)
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「ブリューゲルへの招待」(朝日新聞出版刊)