1強下でのメディア。週刊文春の新谷学編集長は「私たちは安倍政権の敵対メディアでもないが、応援団でもない」と語る。「編集長が雑誌の前に出すぎるのは、その雑誌にとって弊害」と顔をさらさないようにしている
■(1強・第2部)パノプティコンの住人:5
連載:「1強」
安倍晋三首相による「1強」。その支配に組み込まれているパノプティコンの住人には、政治報道に携わる我々メディアも含まれているのではないか。そんな問題意識から、昨年、「政治とカネ」の問題などで特ダネを連発し、「文春砲」という流行語を生んだ週刊文春の新谷学編集長に、1強下のメディアについて聞いた。
――安倍政権の支持率が5割台を維持しています。森友問題が首相を直撃しても、影響は今のところ限定的で、かえって「1強」を印象づけています。この政治状況と世論をどう見ていますか。
それは極めてわかりやすい話で、安倍首相の代わりがいないからです。1強のおごりや慢心は国会質疑や人事に出ていて、国民には「脇を締めてもらわないと困る」という思いはある。だけど国際情勢が不安定な中、安倍政権に倒れてほしいとは思っていないということでしょう。
――国民は政治のスキャンダルそのものに関心を失ったわけではないということですか。
昨年1月に甘利明・前TPP担当相の金銭授受疑惑をスクープし、辞任された時も「説明責任を果たしていない」という批判の声は上がりましたが、ただちに安倍首相の支持率低下には向かわなかった。長年、政治家のスキャンダルを報じてきましたが、盛り上がるかどうかは多分に政治家のキャラクターによる。分かりやすい分かれ目はワイドショーが取り上げるかどうか。だからといって、我々は盛り上がらなそうな政治家であっても報じるべき事実は報じます。