多額の現金がなくなった広島県警広島中央署会計課を調べる捜査員=11日午後10時2分、広島市中区、上田幸一撮影
広島市中区の広島中央署で、証拠品の現金8572万円が盗まれた事件は、大型連休中に犯行が行われた可能性が高いことが11日、捜査関係者への取材でわかった。期間中、広島市内では大型イベントが開かれていた。金庫のあった会計課では落とし物対応で業務にあたり、多くの署員が出入りできたという。広島県警は計画性を持った内部犯行の可能性が高いとみて調べている。
警察署内で現金8千万円盗難 特殊詐欺の証拠品 広島
これまでの県警の調べでは、現金が盗まれているのが発覚したのは8日夜。会計課員が、金庫の鍵を管理している課長の机の引き出しの錠が壊されているのを発見し、金庫を調べたところ被害がわかった。
金庫はダイヤル式の暗証番号と、差し込み式の鍵の二つで施錠するタイプといい、発覚した際、施錠はされていたという。鍵は机の中に戻されていたという。
だが、捜査関係者によると、課員が2日に机の引き出し周辺を見た際には、異状に気づかなかったという。
3日から5日は広島市中心部で大規模なイベント「ひろしまフラワーフェスティバル」が開かれており、会計課は落とし物の受け付けや返還のため、業務にあたり、署内は多くの署員の出入りが可能だったという。県警は会計課員たちから事情を聴いている。
この現金は、県警が今年2月、生前贈与を持ちかけて手数料名目で金をだまし取る多額詐欺事件で押収した。事件では「生前贈与したい」と、うそのメールを不特定多数に送信し、返信してきた相手に「手数料が必要」などとして現金を振り込ませていたという。被害者は全国で400人以上、被害総額は1億6500万円に上るとされる。
県警は多額だったため、捜査する生活安全課の保管庫には収まらないことを理由に、会計課の金庫を使い、袋に小分けにして保管していた。被害に遭ったのは全部ではなく、一部は残っていた。
会計課は落とし物の受け付けや返還、署内の消耗品の購入などを担当。庁舎の正面玄関から入り、1階の奥まった場所にあり、部屋の鍵は警務課で管理している。平日の日中は職員が勤務しているが、夜間や休日は、最後に施錠した課員が鍵を当直勤務の署員に託す仕組みになっていた。