ソナーで見つけた潜水艦の船影について説明するラ・プロンジェ深海工学会の浦環・代表理事=東京都港区
長崎県五島列島沖の水深200メートルの海底に、巨大な潜水艦が突き刺さっているのが見つかった。付近を調べていた研究チームが25日、発表した。第2次世界大戦後に連合国軍が沈めて処理した旧日本海軍の「伊58潜水艦」の可能性があるという。
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調査した「ラ・プロンジェ深海工学会」によると、潜水艦24隻が海没処理された記録をもとに今月19~21日、音波で物体を調べるソナーで付近を詳しく調べた。すると、海底付近で船影を発見。約60メートル垂直に立ち上がった船影は、潜水艦のほぼ半分で、爆破されて二つに折れたものらしい。
研究チームによると、大きさや形状から、戦時中の1945年に米重巡洋艦「インディアナポリス」を撃沈した「伊58」の可能性があるという。ただし付近の海域には同型艦が計4隻沈んでおり、研究チームは今後、水中ロボットの調査で艦名を特定する計画だ。
米艦インディアナポリスは、広島と長崎に落とされた原子爆弾の部品を米国本土から太平洋のテニアン島に輸送したことで知られる。伊58には、魚雷だけでなく、人が乗って目標に体当たりする人間魚雷「回天」も搭載されていたとされている。
同じ海域では、当時世界最大の潜水艦だった「伊402」とみられる長さ約120メートルの船影を含め計24隻が確認されている。研究チームによると、今回の調査目的は、沈んだ潜水艦の詳細を伝えることで、戦争や軍事技術について考えてもらうこと。調査費用は寄付などでまかなっている。
将来的には沈没船や部品を引き揚げて、記念館を設立することも検討しているという。25日に都内で会見をした学会の浦環(うらたまき)代表理事は「沈んだ潜水艦を記念碑として、平和な社会を考える礎にしたい」と話した。(小堀龍之)