衆院予算委の集中審議で答弁する安倍晋三首相(手前)。後方左は山本幸三地方創生相、同右は松野博一文科相=16日午後、小玉重隆撮影
安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)の国家戦略特区への獣医学部新設をめぐり、今国会で最後の論戦が16日、交わされた。同日までに出そろった文部科学省と内閣府の調査結果の内容が食い違う中、「総理のご意向」と記された一連の文書などの事実解明には至らなかった。文書の発覚から1カ月。国会は事実上閉会したが、さまざまな疑問が残ったままだ。
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15日に文科省が公表した再調査の結果では、内閣府から同省が「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」と伝えられたと記録された文書の存在が確認された。作成者とされる担当課の課長補佐は内容について、「(内閣府側から)こうした趣旨の発言があったのだと思う」と説明している。
これに対し、特区を担当する山本幸三地方創生相は16日、文科省の調査を受け、同省が存在するとした文書14点のうち4点を内閣府でも確認したと発表した。しかし、聞き取りを受けた内閣府の担当者9人が「総理のご意向」「官邸の最高レベル」の文言について、「発言していない」「聞いた記憶はない」などと否定したことを明らかにした。
16日の審議では、官邸幹部の関与の有無も焦点になった。
文科省は、萩生田光一内閣官房副長官が内閣府に対し、獣医学部を新設する事業者選定について、実質的に加計学園しか応募できなくなる要件に修正するよう指示したことがうかがえるメールと文書を公表した。
共産党の小池晃氏が参院予算委で「修正の指示について、いかなる発言もしていないと断言できるか」とただしたのに対し、萩生田氏は「指示したことはない」と否定。安倍首相も「最終的に政府全体で決定した」と述べて手続きに誤りはなかったとの認識を示し、メール、文書の内容と萩生田氏ら官邸側の認識が真っ向から対立した。
一方、安倍首相は参院予算委で、「総理のご意向」などの一連の文書の存否の確認が遅れたことについて「対応に時間がかかったことについては、率直に反省したい」と述べた。(水沢健一)
◆加計学園の問題をめぐる文部科学省と内閣府の調査結果の対立点
【「総理のご意向」「官邸の最高レベル」の文書】
〈文科省〉作成したとされる課長補佐が「こうした趣旨の発言があったのだと思う」と回答
〈内閣府〉発言したり、聞いたりした職員はいない
【萩生田内閣官房副長官の指示をうかがわせるメール】
〈文科省〉内閣府との窓口の部署で存在を確認
〈内閣府〉「事実関係を確認しないまま発信」と内容を否定