浜田真由(中央)、兄の康弘(右)、弟の一誓
韓国・茂朱(ムジュ)で24日に開幕するテコンドーの世界選手権女子57キロ級に、この競技唯一のリオデジャネイロ五輪日本代表だった浜田真由(23)=ミキハウス=が大会2連覇をかけて出場する。目標の金メダルに遠く及ばず、涙をのんだリオ五輪以来の主要国際大会復帰戦。世界選手権では、同じ道場で練習する兄と弟も代表に選ばれ、3きょうだいそろって世界に挑む。
両親と5人で暮らす佐賀市内の浜田家には、神棚に「3人そろって日本一」と毛筆で書かれた紙が貼ってある。12日、自宅近くの古賀道場で最終調整に励む真由を訪ねると、「3人が世界でどれだけ通用するのかすごく楽しみ。世界の選手たちに浜田きょうだいを知ってほしい」と話した。
1月の全日本選手権で、父、康二さん(48)は思わずぐっときたという。次男の一誓(22)=古賀道場=が男子63キロ級決勝を戦った時だ。これまで競技実績では兄と姉の背中に隠れていた一誓の、初の日本一が懸かる試合。
直後に試合がある68キロ級の長男、康弘(24)=古賀道場=は口にマウスピースをくわえながら、なりふり構わず弟に声を送った。同じく出番を待っていた真由も、自分の準備運動はそっちのけで弟を必死に応援。「絶対に3人で日本一になる。そんな気迫を感じてうれしかった」と康二さん。小学生の頃から技を磨き合った年子の3人がやっと、神棚に貼ってある「そろって日本一」をかなえた。
弟の一誓は、リオ五輪の真由のあっけない敗北の姿を見て、考えたという。「そばに誰もいてあげられなかった。次の東京五輪こそ、弟の自分が一緒に出なきゃいけない」。世界選手権代表入りはその第一歩だ。兄の康弘も「自分が引っ張る気持ちでやる」。世界のライバルの動向を見据えて、この2年で階級を二つ上げ、74キロ級で戦う。
父、康二さんは「3人は一緒になるとメロディーが奏でられるというのかな。兄と弟の調子がよければ、不思議と真由も普段以上の力が出るんです」。
17日に韓国入りした真由は、「技術ばかり考え過ぎた」というリオ五輪の反省から、世界選手権では「自分の勝負感覚を大切にする」と意気込む。「力を合わせて戦ってきます」。表情は自信に満ちていた。(波戸健一)